研究課題
女性の部位別の第1位である乳がんでは、その約70%がエストロゲン受容体(ER)陽性で、エストロゲンに依存して増殖する。このため、エストロゲンを阻害するホルモン療法(内分泌療法)が有効であるが、その後に治療抵抗性を獲得して再発することが大きな課題である。その要因として、ERをコードするESR1遺伝子が高発現するが、その機序は不明である。本研究では、乳がんのホルモン療法耐性におけるエピジェネティックな分子病態に基づいて、長鎖非コードRNA群(エレノア)を指標とするエストロゲン誘導細胞死の応用基盤を新たに確立することを目的とした。具体的には、ER陽性乳がん細胞株(MCF7)をエストロゲン枯渇下で4ヶ月以上培養して増殖能を獲得したホルモン療法抵抗性モデル系(LTED)を用いて、エレノアRNAがESR1遺伝子座の転写活性化、エピゲノム修飾、高次クロマチン構造の形成に働くメカニズムを分子レベルで明らかにした。染色体コンフォーメーション捕捉法を用いて、同じヒト6番染色体上でESR1遺伝子(細胞増殖に関わる)が約40Mb離れたFOXO3遺伝子(細胞死に関わる)と相互作用して共制御されることが分かった。また、エストロゲン又はエストロゲン様化合物によるLTED細胞死誘導という治療的ポテンシャルも判明した。このように、エレノアRNAを指標にした用いた治療抵抗性・再発乳がんの診断・治療開発につながる成果を得た。エストロゲン誘導細胞死の臨床応用を目指して提唱したcancer navigation strategyを強く支持する重要性がある。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件) 図書 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Commun. Biol.
巻: 3 ページ: 60
10.1038/s42003-020-0784-9
Cancer Med.
巻: 9 ページ: 2223-2234
10.1002/cam4.2885
Genome Biol.
巻: 21 ページ: 77
10.1186/s13059-020-01991-8
Nat. Commun.
巻: 10 ページ: 3778
10.1038/s41467-019-11378-4
Trends Endocrinol. Metab.
巻: 30 ページ: 409-412
10.1016/j.tem.2019.04.010
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp