研究課題/領域番号 |
18K19481
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
北山 丈二 自治医科大学, 医学部, 教授 (20251308)
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研究分担者 |
山口 博紀 自治医科大学, 医学部, 教授 (20376445)
三木 厚 自治医科大学, 医学部, 講師 (20570378)
寺谷 工 自治医科大学, 医学部, 講師 (70373404)
宮戸 秀世 自治医科大学, 医学部, 講師 (90813163)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | リンパ節転移 / 胸管 / 化学療法 / ドラッグデリバリー |
研究実績の概要 |
広汎に多発リンパ節転移をきたし、根治切除不能な消化器癌に対し、頸胸部から胸管内にカテーテルを挿入、そこから逆行性に抗癌剤を持続注入し、広汎な腹部リンパ節転移巣に高濃度の薬剤を選択的に投与することで、高い抗腫瘍効果と毒性の軽減をはかる「逆行性リンパ管内化学療法」という新規治療戦略の可能性を探ることを目的とした。方法として、まず、麻酔下に大動物のブタの胃壁内および腹部リンパ節に青色色素(パテントブルー)を注入しリンパ管系を容易に視認できるようにした後、開胸し、胸管を同定することを試みた。その結果、腹腔リンパ本管は横隔膜を通過した後、枝分かれして大動脈周囲を上行し、気管分岐部から頭側で再び集合し集合リンパ管を形成することが解った。そこで、頸胸部の気管左方で胸管をテーピングし、カニュレーションをする動物モデルを作成し、水溶性抗癌剤であるシスプラチン、脂溶性抗癌剤パクリタキセルを胸管チューブより投与、薬物を投与しその動態を検討することにした。今後はこのモデルを用いて、血液および種々の臓器における抗癌剤の濃度を胸管内投与後24時間まで経時的に測定することで、全身投与との薬物動態の違いを明らかにする。さらに、免疫不全ブタを用いて腹部リンパ節に腫瘍を注入、転移癌を作成した後、同様の方法で抗癌剤を胸管内に留置したカテーテルより投与しその組織学的効果を経静脈的に投与した群をコントロール群として比較し、その治療効果についても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計4頭のブタを使用し、麻酔下に開腹し、腸間膜リンパ節内にパテントブルーを注入し、開胸後ブタの胸管を確認し、テーピングした後に胸管にPICCカテーテルのカニュレーションを行い、造影剤を用いてリンパ管造影を施行することで、胸管の走行を確認することに成功した。さらに、パクリタキセル5mg/mlを胸管内に注入し、1、4時間後に血液および腹部リンパ節を含めたできた臓器を採取、凍結した。このサンプルを用いて、LC-MS方法でパクリタキセルの濃度を測定することができた。以上から、実験系を確立するという初年度の目標はクリアできた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に確立したブタ実験システムと薬物濃度測定法を用いて、パクリタキセルを胸管チューブより投与し、ブタの腹腔内リンパ節における抗癌剤濃度を経時的変化を、同量の抗癌剤を経静脈的に投与した群をコントロール群として比較検討する。同時に、血清中、腹水中の薬剤濃度とともに、リンパ節以外の臓器、脳・肺・心臓・胃・肝臓・脾臓・腎臓・小腸・大腸についても抗癌剤濃度を測定し、胸管内抗癌剤投与後の薬物動態に関する詳細な結果を得る。また、シスプラチンを用いて同様の検討を行い、抗癌剤の水溶性・脂溶性の違いによる薬剤分布に違いついても合わせて検討する。また、免疫不全ブタリンパ節転移モデルを用い、パクリタキセルの胸管内投与が転移リンパ節に与える組織学的奏効を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に使用する動物(ブタ)および手術に要する物品は高価で、一回の実験につき約30~50万円程度のコストがかかる。このため、初年度は、実験系を確立する目的にて、他の目的(鏡視下手術の練習用)で既に使用したブタをより安価で供給してもい、予定より少ない物品費で初期の目的を達成することができた。そこで、次年度にあらかじめ予定していた実験回数を3回程度増やして、より精度の高いデータを得ることを意図して繰越し使用とした。
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