研究課題
線維芽細胞の有無によるがん細胞の浸潤様式の差異と、浸潤におけるがん幹細胞の担う役割を検討した。その結果、1)線維芽細胞存在下において、線維芽細胞により再構成された ECM に沿ってがん細胞が浸潤すること、2)線維芽細胞の存在により、がん細胞の浸潤が促進されており、小型の胞巣を形成しながら浸潤していること、が明らかになった。また、線維芽細胞存在下において、浸潤部でより多くの増殖期の細胞を認めたことから、がん細胞はその浸潤過程で増殖を伴うことが明らかになった。がん患者検体を用いた検討においても線維芽細胞が豊富に含まれる領域において浸潤がん細胞の Geminin 陽性割合が高いことにより、本検討で明らかとなった現象は実際のがんの病態を反映していると考えられる。次に、線維芽細胞存在下と非存在下におけるがん幹細胞(Podoplanin陽性)の浸潤について検討した。線維芽細胞非存在下において、Podoplanin陽性がん幹細胞とPodoplanin陰性非がん幹細胞の浸潤に差を認めなかった。しかしながら、線維芽細胞存在下において、Podoplanin陽性がん幹細胞は非がん幹細胞と比較して高い浸潤能を示した。一方で、浸潤様式、増殖期の細胞割合に差を認めなかった。sh-RNA を用い Podoplanin のノックダウンを行ったところ、線維芽細胞存在下におけるがん細胞の浸潤が抑制された。これらの結果から、線維芽細胞存在下においてPodoplanin陽性がん幹細胞は、 Podoplanin 分子自身を介して ECM 内の運動能を活性化していることを示唆している。 また、線維芽細胞存在下でのみ浸潤が促進されたことから、がん幹細胞と線維芽細胞の間に、がん幹細胞の浸潤を促進する相互作用が存在している事を示唆している。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
J Cell Physiol.
巻: XX ページ: XX
10.1002/jcp.29624.
J Cancer Res Clin Oncol.
巻: 145 ページ: 373-381
10.1007/s00432-018-2798-y.