研究実績の概要 |
本研究では、申請者がこれまでの研究過程で偶然見出した低分子型二重特異性抗体(BsAb)が、飛躍的に生物活性を向上させたメカニズムを、抗原-抗体複合体の形成に伴うダイナミックな構造変化から解き明かし、「metamorphosis抗体」と独自に定義した新規フォーマットの抗体を設計することを目的とする。今回、Fvの熱安定性の向上が期待できるdsFvに着目し、taFv (EphA10/CD3), taFv (EphA10/CD3IgM)遺伝子をもとにEphA10, CD3抗体のVL, VHドメインにそれぞれシステインを導入した計4種類のtaFv dsFv発現ベクターを構築し、哺乳類発現系を利用した調製を試みた。その結果、EphA10抗体のドメインにシステインを導入したtaFv A10 dsFv (EphA10/CD3), taFv A10 dsFv (EphA10/CD3IgM)では、ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製を試みたが、目的タンパク質に相当するピークは認められなかった。 また、調製した2種類のtaFv CD3 dsFv (EphA10/CD3), taFv CD3 dsFv (EphA10/CD3IgM)を用いて、ジスルフィド結合の導入による熱安定性の向上がみられるかTSAによる評価を試みた。その結果、2種類のtaFv CD3 dsFvは、ジスルフィド結合を導入する前のtaFv (EphA10/CD3), taFv (EphA10/CD3IgM)と同様に、2つのTm値が示された。さらに、システインの導入後において、2つのピークの内、より安定性に優れたTm値が、さらに高温側にシフトすることが見出され、ジスルフィド結合の導入による安定化が認められた。本結果から、taFvフォーマットにおいてみられた2つのTm値は、高温側がCD3抗体のscFvに相当し、低温側がEphA10抗体のscFvに相当する可能性が考えられた。
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