令和2年度は、計画3年目の3年目として光操作実験を実施した。ウィルスを注入する脳部位から記録した神経細胞活動の解析を行った後に、背外側前頭前野へのウィルスの注入を行い、当該脳部位及び、投射領域の線条体に光刺激を行った。以下にその内容を記す。
本研究は、霊長類に光遺伝学を適用する方法を確立し、汎用性の高い実験を行うことを目的として実施した。特に、前頭葉-線条体の神経投射を選択的に操作することで、前頭葉の活動が線状体の活動を引き起こす仕組みを明らかとする。加えて、光操作により動物の行動を操作するにあたっては、前頭葉の当該領域が動物の行動に応じて活動するかを事前に明らかにする必要がある。そのため、記録した細胞活動が動物の行動に関わる活動であることを観察した後に、ウィルスベクターの注入を行い光受容体遺伝子を導入した。線条体を光刺激した所、応答する細胞があまり観察されなかったため、注入部位の背外側前頭前野の光刺激を行い、応答細胞は少数ではあるが観察されることを確認した。また、行動を詳細に観察したところ、ウィルスの注入前に比べて、眼球運動が若干遅く不正確になっていたため、実験操作により目的外の影響が現れた可能性が考えられた。
この研究を通して、線条体の細胞活動の性質を記録・解析したため、その結果を2報の論文として報告した。萌芽研究として、上記のように一定の進捗を得ることができた。
|