研究課題
脳の情報処理機構を解明するためには、脳を構成する全ての神経細胞の活動を経時的に長期間記録し、機能との対応を解析することが必要不可欠である。しか し、現在使われている神経活動の記録法には欠点があり、脳を構成する全ての神経細胞の活動を長期に亘り記録することができない。本研究では、Cas9の発現に 神経活動依存性を持たせることにより、神経活動の履歴をstgRNA (self-targeted guide RNA)発現カセット上のindelとして記録し、今まで困難であった脳を構 成する全ての神経細胞の活動履歴を記録できる系を開発する。 C6グリオーマは、ATPを投与することによりc-fosの発現が上昇する細胞株である。本年度は、C6グリオーマのc-fos遺伝子座にCas9をノックイン、CMVプロモーター(CMVp)の下流にTetRをつないだベクターおよびtetオペレーターDNA配列を含むRNA polymerase IIIのH1プロモーター(H1p-1xTetO)の下流にstgRNAをつないだベクターを恒常的に発現している細胞株を用い、ATPとドキシサイクリン(Dox)を添加する ことによりstgRNA上にindelが起きるかどうか、T7 E1アッセイやdeep sequenceにより解析した。 しかし、stgRNA上にindelはほとんど見られなかった。原因として、tetRおよびH1p-1xTetOの挿入部位による発現抑制効果が考えられるので、挿入部位としてセーフ・ハーバー部位を選び、tetRをROSA遺伝子座に、H1p-1xTetOをβ-actin遺伝子座にノックインした細胞株を樹立した。
3: やや遅れている
実験計画通り作成した細胞株で、c-fos上昇によりstgRNA上のindelは確認できなかった。原因として、tetRおよびH1p-1xTetOの挿入部位による発現抑制効果が考えられる。そこで、セーフ・ハーバー部位を選び、tetRをROSA遺伝子座に、H1p-1xTetOをβ-actin遺伝子座にノックインした細胞株を樹立した。
新しく樹立した細胞株が、神経活動をDNA上のindelとして記録することを確かめる。神経活動をDNA上のindelとして記録できることが確かめられたら以下の3系統のマウスを作成し、交配することにより神経活動をゲノム上に記録できるマウ スを作成する。a.c-fos遺伝子座にCas9をノックインしたマウスb.β-actin遺伝子座にH1p-1xTetO-stgRNAをノックインしたマウスc.ROSA遺伝子座にTetRをノックインしたマウス 作成したマウスにドキシサイクリン入り餌を投与し、PTZでてんかん発作を誘発し、脳の各部位からDNAを抽出し、stgRNAノックイン部位をPCRで増幅し、deep sequenceによりindelが起きている割合を解析し、神経活動がゲノム上に記録されているかを明らかにする。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Biochem. Biophys. Res. Commun.
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European Neuropsychopharmacology
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