研究課題
「幻聴」とは、言語聴覚認知システムの一部が崩壊し、誤作動や過活動していると考えられているものの、その神経科学的な脳内プロセスは多くの謎に包まれている。本研究ではヒトで幻聴誘発能力のある上皮成長因子受容体抗体や有力な統合失調症モデル動物を用いて、モデル動物の一次聴覚野と前頭葉の神経活動とその同期性・連合性を解析することにより、「幻聴」や「錯聴」の脳内プロセスの再現を試みるとともに、そのメカニズムのヒントを得ることを目標とする。本年度は、幻聴を科学的、生物学的にモデル動物で検出し、実証できうる方法の開発を開始し、上皮成長因子投与で作製された統合失調症モデル動物の聴覚過活動の実態解明を試みた。まず、自己の鳴き声や環境音による一次聴覚野活動と幻聴のような内的情報での活動を弁別するため、超音波領域に至る広域周波数をモニターできるシステムを構築した、そのうえで、当該モデルラットと健常ラットの一次聴覚野から自由行動下で細胞神経活動記録を実施した。音反応性細胞を同定したうえで、その活動を無音下で記録した結果、モデルラットにおいてのみ、バースト発火を示す細胞が存在した。このようなバースト発火が、より広範に聴覚野に広がっているかどうかをGCAMP蛋白を用いたカルシウムイメージングで検証した。結果、モデルラットにおいて、無音下にもかかわらず、数秒間にわたるGCAMPの活性化,つまりは広範な神経活動が一次聴覚野で観察された。この結果は、当該モデルラットが音刺激のない状態で、幻聴に類するなんだかの音を感知している可能性を示唆する。
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精神神経学雑誌
巻: 印刷中 ページ: 未定
Schizophrenia Bulletin Open
巻: 2 ページ: sgaa070
10.1093/schizbullopen/sgaa070
Clinical Neurophysiology
巻: 131 ページ: e257 - e257
10.1016/j.clinph.2020.04.115