SEPN1関連ミオパチーは乳児期に発症し早期人工呼吸器管理となる重篤な遺伝性疾患であるが、我々は全エクソーム解析により新規SEPN1ホモ接合型ナンセンス変異(c.XXX C>T)による高齢発症ミオパチー家系を見出している。患者生検骨格筋の免疫染色および電子顕微鏡による超微細形態の観察などにより、本家系が高齢発症にも関わらず、早期発症の典型例と同様にマルチミニコア病と称される先天性異常の筋病理を示すことを明らかにしている。またナンセンス変異下の逆説的なSEPN1の高発現を、新規作製抗体を用いてのウエスタンブロットおよびRT-PCRにより確認している。患者皮膚線維芽細胞を樹立しヒト細胞モデルを作成し、ADAR2依存的なナンセンス変異部位のRNA編集による正常化(c.XXX T>C)をSangerシークエンスにより確認しており、ADAR2の先天性ミオパチーの晩発化機序への関与が示唆されている。続いてCRISPR-Cas9システムによる、マウスSepn1遺伝子内の変異相同部位およびその近傍配列をヒト配列化した、塩基置換ノックインマウスの複数の系統の作製に成功しており、マウス表現型、筋病理、遺伝子発現の解析を進めている。またマウス実験用ADAR2遺伝子あるいはそのshRNA搭載アデノ随伴ウイルスを共同研究者より入手しており、そのマウス介入研究への応用準備を整えている。また患者親族の同意のもとに発症者1名の剖検を施行をし、臨床検体試料を用い、Sangerシークエンス、さらにRNAシークエンスによる変異部位RNA解析を行い病態解明を目指している。
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