研究課題
本研究は、細胞ストレス応答時に発動される翻訳機構が、non-AUG翻訳による異常タンパクの産生に寄与している可能性を検討し、FTLDやALS、さらには他のリピートによる神経変性疾患の治療薬開発につなげることを目指す。DPRタンパクは凝集性、細胞毒性を有し、神経細胞死を引き起こす。したがってnon-AUG翻訳のメカニズムを明らかにし、選択的にその翻訳を選択的に制御することができれば、これらの神経変性疾患に対する新規治療法となりうる。翻訳開始因子とRNAとの結合は翻訳の第一ステップであるが、non-AUG翻訳がどのような翻訳開始因子を用いているのかは不明である。本研究では申請者が開発したC9orf72-GGGGCCリピート延長変異におけるnon-AUG翻訳アッセイ系を用いて、Non-AUG翻訳における翻訳開始因子を同定する。研究初年度となるH30年度は、細胞ストレス応答時に発動されるとされている代替翻訳開始因子に着目し、siRNAによるノックダウンを行って、それぞれの因子がC9orf72リピートのnon-AUG翻訳に与える影響について、翻訳産物であるDPRタンパクの発現レベルを指標に評価を行った。その結果、siRNAによるノックダウン時にDPRタンパクの発現レベルを低下させる、ある有望な因子を見出した。当該因子をコードする遺伝子をプラスミドベクターにクローニングし、逆に当該因子の過剰発現を行ったところ、DPRタンパクの発現は著しく増加した。これらの結果から、今後、本因子に着目して、解析を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度の検討によりリピートRNAのnon-AUG翻訳に関与すると考えられる有望な因子を見出したと考えられるため。
分子生化学的な手法により、H30年度の研究により見出した当該non-AUG翻訳調整因子の作用メカニズムの詳細を明らかにしていく。また本因子のストレス応答時における挙動についても並行して明らかにしていく予定である。
実験の進行状況が計画より少しずれが生じたため
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
The EMBO Journal
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