研究課題/領域番号 |
18K19518
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
沢津橋 俊 徳島大学, 先端酵素学研究所(オープンイノベ), 特任講師 (70535103)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ビタミンD受容体 / ビタミンD依存性くる病 / ゲノム編集 / 点変異 / 毛周期 / 脱毛 |
研究実績の概要 |
毛を生み出す毛包は、『成長期 (anagen)』・『退縮期 (catagen)』・『休止期 (telogen)』を周期的に繰り返す動的に維持された器官であり、これまで幹細胞-ニッチ研究の重要なモデルとして用いられてきた。しかしながらこれまでは特に発毛の観点で、いかにして『成長期』が制御されるか、に主眼をおいた研究が展開されてきたため、『退縮期』の制御に焦点を当てた研究は驚くほど少ない。そこで本研究では、これまでに解明の進んでいない『退縮期』の制御メカニズムを明らかにすることを目的とした。 本研究では、まず毛包の退縮異常を呈する脱毛モデルとして、申請者らが樹立した表皮・毛包特異的ビタミンD受容体ノックアウト(VDR cKO)マウスを主に用いた。またこれに加え、ゲノム編集により新たにビタミンD依存性くる病型の脱毛モデルマウスの樹立を試みた。この新規脱毛モデルマウスは、ビタミンD依存性くる病で報告されるビタミンD受容体遺伝子の変異部近傍のうちで、タンパク結合表面となりうる複数のアミノ酸残基に、変異置換を導入することで作出し、カルシウム・リン代謝に異常をきたさず、脱毛の病態のみを模倣することを特徴とする。連携研究者との共同研究として、候補の10カ所のアミノ酸残基すべてに置換変異を導入したマウスの作出に成功し、樹立したマウスの交配を進めている。このうち3系統ではすでにホモ系統が得られ、脱毛の表現型を示すか否かのスクリーニングが進行している。またこのほかに、毛包を含む表皮の初代培養系の確立と、表皮培養細胞におけるVDR複合体の生化学的手法による同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビタミンD依存性くる病で報告されるビタミンD受容体遺伝子の変異部近傍の候補の10カ所のアミノ酸残基すべてに置換変異を導入したマウスの作出に成功し、樹立したマウスの交配を進めている。このうち3系統ではすでにホモ系統が得られ、当初の予定通りに脱毛の表現型を示すか否かのスクリーニングが進行している。また、器官レベルでの解析として、『退縮期』のライブイメージングを検討しており、まずは毛包細胞を含む皮膚組織の初代培養系を構築した。Keratin14-Creマウスを用いて表皮・毛包細胞をmCherry蛍光タンパク質でラベルした細胞をイメージングすることが出来ている。これらに加えて、生化学的手法によりVDR複合体の同定を試みるため、VIKING法でVDR点変異ノックイン細胞を作出した。これを材料に、RIME法によるVDR複合体の精製を行い、質量分析器による相互作用因子の同定を行った。VDR欠損細胞を用いることで、抗体に対する擬陽性タンパクが除外でき、VDR点変異ノックイン細胞で優位に相互作用できなくなる因子が見出された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、樹立したビタミンD受容体遺伝子の点変異マウスの交配を進め、ホモ系統が得られたのち、当初の予定通りに脱毛の表現型を示すか否かのスクリーニングを行う。また、毛包の初代培養による『退縮期』のライブイメージングを引き続き進める。これらに加えて、生化学的手法によりVDR複合体の同定を試みるため、上述のスクリーニングで表現型の観察された点変異について、VIKING法でVDR点変異ノックイン細胞を作出する。これを材料に、RIME法によるVDR複合体の精製を行い、質量分析器による相互作用因子の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では遺伝子発現をin situで検出する目的でハイブリオーブンの購入を計画していたが、学内の別研究室での貸与が可能であったため購入を見送ることとした。これに代わって、本研究計画のうちの毛包の器官培養にはビブラトームによる生組織の薄切断片化が必要となる可能性が出てきたため、装置の購入を検討する。器官培養にビブラトームが必要でなくなった場合には、10系統のゲノム編集マウスの増産飼育に使用する。
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