CELR-Xによるミトコンドリア機能活性化の詳細な分子機構の解明と老化関連疾患の抑制作用の検討を行った。CELR-Xと複合体を形成する因子の同定のため、CELR-X改変マウスを用いてプロテオーム解析を行った。CELR-Xの標的遺伝子を複数同定し、その中でCELR-X Target Gene-1(CTG-1)について検討を行い、CELR-XはCTG-1の翻訳を抑制することを明らかにした。さらにCTG-1 欠損マウス、心筋特異的CTG-1欠損マウスを作製し、解析、検討を行ったところ心臓のCTG-1の発現減少によって心不全病態の進行抑制を認めたが、ミトコンドリア機能は差異を認めなかった。この結果よりCELR-Xの心不全病態抑制作用はCTG-1を介さないミトコンドリア機能を亢進する機構とCTG-1タンパク発現抑制を介した機構の存在が示唆された。また CELR-X強制発現による老化表現型解析を検討するため高齢野生型マウスにアデノ随伴ウイルスを用いて心筋、骨格筋にCELR-X強制発現させた。今後、運動耐用能や心機能解析、代謝解析等について検討を進める。CELR-Xのヒトオルソログ同定と機能解明についてはCELR-Xのマウスゲノム配列に相当するヒトゲノム配列部位にlncRNA転写産物を複数認め、その中で2つの転写産物がヒトiPS由来分化心筋細胞において高発現を認めた。この2つの転写産物は、ヒト遺伝子配列上の存在がマウス遺伝子配列上と同じ部位に相当すること、さらに心筋細胞で高発現を認めることから、これらのlncRNA転写産物がヒトCELR-Xのオルソログである可能性が強く示唆された。in vivoで機能解析を行うため、マウスCELR-Xと同じ遺伝子座に挿入し、全身過剰発現マウスを作製した。これらを用いて、マウスCELR-Xで認められた同様の表現型の有無について検討を検討を行う。
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