研究課題
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアDNAのうち、トランスファーRNA(tRNA)をコードする遺伝子の点変異を主な起因とする神経難病である。発症の分子機序が不明であり、有効な治療薬が存在ない。申請者は、mt-tRNAに多種の硫黄修飾を同定し、これら硫黄修飾は活性硫黄という新規代謝物に由来することを明らかにした。重要なことに、ミトコンドリア病患者では、活性硫黄代謝が破綻したことで、多数のmt-tRNAにおいて硫黄修飾が障害され、ミトコンドリア機能が急激に低下した。そこで、本研究は、mt-tRNAの硫黄修飾ならびにミトコンドリア機能の回復を可能にする機能性活性硫黄化合物ならびに硫黄う代謝に関わる遺伝子の探索を目的とする。平成30年度において、活性硫黄ケミカルバイオロジーを用いて、グルタチオンなど様々な分子を骨格に持つ活性硫黄ライブラリーを構築した。また、合成した化合物を細胞に投与し、質量分析器を用いて細胞内への取り込みを検討したところ、これらの活性硫黄化合物は細胞内へ取り込まれることを確認した。一方、硫黄う代謝に関わる遺伝子の探索については、ミトコンドリア代謝に関わる3000個の遺伝子に対して、カスタムshRNAライブラリーを作成した。また、同shRNAライブラリーを有するレンチウィルスを作成した。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、活性硫黄化合物ライブラリーと硫黄代謝を標的とするshRNAライブラリーを作成し、mt-tRNAの硫黄修飾ならびにミトコンドリア機能の回復を可能とする標的化合物や標的遺伝子の同定を目的とする。平成30年度において、化合物ライブラリーとshRNAライブラリーの作成が当初の計画通りに終了しため、研究がおおむね順調に進展している。
上記の研究成果を踏まえ、2019年度は化合物ライブラリーとshRNAライブラリーのスクリーニングを重点的に進める。具体的には、化合物ライブラリーをMELASやMERRF由来の繊維芽細胞に投与し、mt-tRNAの硫黄修飾が回復できるかについて質量分析法で検討する。また、生化学的な方法によりミトコンドリアタンパク質翻訳とミトコンドリア電子伝達系の活性を検討するとともに、代謝メタボロミクスを実施し、活性硫黄化合物によるミトコンドリア機能の改善を評価する。一方、shRNAライブラリーについては、をMELASやMERRF由来の繊維芽細胞に投与し、細胞増殖能やmt-tRNA内の硫黄修飾の改善を指標にスクリーニングを行う予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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