研究課題
本研究は、がん抑制遺伝子p53分子の血管炎症調節因子としての役割について新たな知見を探索するものである。培養血管内皮細胞を主として使用して、その様々な代謝経路について多角的に研究を進めてきた。2019年度は、当初計画していた大きな3つの柱の実験の関連を意識しながら遂行してきた。1.p53分子による糖代謝の制御:p53と糖代謝についての直接的な関連を解糖系の律速酵素であるヘキソキナーゼ阻害などによる代謝系から見たp53の動態、p53の発現抑制による代謝系の変化について検討を行っている。また、p53分子発現抑制による血管内皮細胞の遺伝子変化をプロファイリングにより明らかにした。この変化する分子群については更なる検討が必要である。2.p53分子の鉄代謝の制御:鉄代謝関連分子のIRP1/2についての検討を行っている。低酸素刺激により発現が安定化するHIF-1分子は鉄代謝の影響を大きく受けている。また、血管内皮細胞の増殖にかかわる分子VEGF-Aの発現はがん細胞でその動態が顕著なため、低酸素状態のがん細胞が産生するVEGF-Aの変化、p53の関わりについても1の糖代謝の変化とも絡めて検討した。3.p53分子とmTORシグナルの相互作用を検討:血管内皮細胞の生存にかかわるmTOR分子群とp53についての既知の事実を基にして、mTORC2の中心分子Rictorが血管内皮細胞の働きに及ぼす影響について検討した。Rictorは単球系のサイトカイン分泌制御にも関与している自験の報告があり、その分子メカニズムをさらに検討している。
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