研究課題/領域番号 |
18K19526
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
武城 英明 東邦大学, 医学部, 教授 (80291300)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 可溶性LR11 / アルツハイマー病 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
糖尿病患者がアルツハイマー病を合併しやすいことが注目されている。しかしながら、その病態連関は不明のところが多い。本研究は、『可溶性アポEレセプターを放出するプロテアーゼ制御の破綻』が糖尿病を引き起こす脂肪細胞障害とアルツハイマー病の早期神経変性の共通メカニズムになるという仮説をたて、アルツハイマー病患者脳組織切片と髄液検体を提供する米国ワシントン大学セントルイス校神経科と糖尿病基礎研究を行うケンブリッジ大学メタボリックリサーチセンターと共同で、米国アルツハイマー病研究拠点(ADRC)バンクより送付されたヒトアルツハイマー病脳組織切片と髄液の検体解析と細胞基礎解析を行い、新規バイオマーカー可溶性レセプターLR11から視た糖尿病とアルツハイマー病の発症に共通する細胞機能の病的障害メカニズムを提示することを目的とした。今年度はADRCより送られた匿名化脳組織切片の免疫染色解析の条件設定に着手した。当初予定していたLR11細胞外領域抗体A2-2-3抗体によるヒトアルツハイマー病脳組織切片の免疫染色に、細胞内領域を抗原とした抗体を加えて条件検討を行い、LR11免疫染色の条件をそれぞれ検討し、最適な染色条件を確定した。一方、糖尿病発症におけるLR11分断の意義を明らかにするために用いる不死化初代培養脂肪細胞を樹立するために、マウスおよびヒト脂肪組織から前駆細胞を調整し、それぞれ複数の脂肪細胞由来前駆細胞クローンを獲得した。それぞれの細胞株に成熟脂肪化条件で分化誘導し、成熟脂肪細胞におけるmRNA遺伝子発現解析に着手し、これらを確認後、不死化処理を行う。今後、脳組織切片と不死化培養細胞を用いて、分断されたLR11エクトドメインと細胞内断端の発現レベルを定量化し、糖尿病病態とアルツハイマー病の病態指標との関連を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトアルツハイマー病脳組織切片のLR11免疫染色においては、LR11細胞外領域を認識する抗体に加えて、細胞内領域を認識する抗体を用いた免疫染色の条件検討を行い、両者の発現の強度を比較できる染色条件をほぼ設定できた。一方、糖尿病病態とアルツハイマー病病態におけるLR11分断の共有する病的意義を解析するためのマウス及びヒト脂肪由来前駆脂肪細胞について、複数のクローンの樹立に成功した。以上より、当初、初年度に予定していた主要計画である脳組織切片の免疫染色条件検討と初代細胞株の確立を終了することができた。初年度の研究計画をおおむね順調に達成したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度研究計画に沿って、マウス白色脂肪から均一化し獲得した前駆脂肪細胞を調整し、分化成熟機能を検証する。それをもとに、SV40を導入し不死化処理を行い複数のクローンを樹立する。これまでの細胞株スクリーニング実験結果から細胞増殖能は十分であり、分化率も高い特性を有する前脂肪細胞株を数クローン得られたことが確認できている。不死化脂肪細胞株を用いた解析では、LR11細胞内べジクル局在と分断放出過程解析、メタボローム解析を行う。また、ヒトアルツハイマー病脳組織切片のLR11免疫染色においてはLR11細胞外領域を認識する抗体及びLR11細胞内領域を認識する抗体を用いて免疫染色の条件検討を行い、今後検討にて設定した条件で米国アルツハイマー病研究拠点(ADRC)バンクより送付されたヒトアルツハイマー病脳組織切片の解析を行い、その結果を用いて米国ワシントン大学研究者と共に、病態との関連解析を行う。
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