疾患の画像診断において、核医学診断は術前の全身スクリーニングを可能とする一方で、蛍光イメージングは術中のリアルタイム診断を可能とする。核医学診断と蛍光イメージングを同時に達成しうる薬剤骨格を開発できれば、疾患の術前診断と術中診断をシームレスに行うことが出来るため、高精度の外科的治療へと繋ぐことが可能となる。そこで本研究では、放射性同位元素であるガリウム-67/68と配位子であるDOTAの錯体が6座配位であることに着目し、DOTAの一つのカルボキシ基に蛍光色素であるFITCを導入し、さらに、DOTA骨格の向かい合うもう一つのカルボキシ基に生体分子認識部位を導入した薬剤(トリファンクショナルキレート)の開発を目指した。本研究では、標的とする生体機能分子として、がんに高発現する葉酸受容体を選択し、それに結合しうる葉酸をDOTAに導入した。 昨年度、葉酸のγ位のカルボキシ基へ選択的にDOTAを導入するために、葉酸の2位と10位のアミノ基およびα位のカルボキシ基を保護した葉酸誘導体を合成したが、今年度はそれを用いて、別途合成したDOTA-FITCと結合させ、標識前駆体を合成することに成功した。なお、合成収率の改善を目指し、反応条件を種々検討した。得られた葉酸結合DOTA-FITCを、ヒト卵巣がん腹膜播種モデルマウスの腹腔内に投与し、蛍光イメージング実験を実施した結果、微小な腹膜播種の検出に成功した。これらの結果より、本研究で新たに合成した葉酸結合DOTA-FITCは、葉酸受容体を高発現する卵巣がんの検出に有効である可能性が示された。
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