研究課題/領域番号 |
18K19529
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
金城 雄樹 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20570831)
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研究分担者 |
高塚 翔吾 国立感染症研究所, 真菌部, 研究員 (90609398)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | カンジダ血症 / 播種性カンジダ症 / 眼内炎 / 抑制性受容体 / Candida albicans / non-albicans Candida |
研究実績の概要 |
本研究では、カンジダ血症・播種性カンジダ症の病態解明及び新規治療法の開発をめざし、播種性カンジダ症のマウスモデルの構築、発症機構及び病態の解析を行っている。まず、好中球やB細胞などに発現する抑制性受容体のLMIR3分子に着目して解析を行った。LMIR3欠損マウスの好中球は、Candida albicansや緑膿菌に対する殺菌活性が高いことを見出した。その結果と一致して、C. albicansや緑膿菌の感染実験にて、LMIR3欠損マウスでは野生型マウスと比較して感染抵抗性を示した(Sci Rep 2018)。抑制性受容体LMIR3はカンジダや緑膿菌に対する好中球の殺菌作用を抑制的に制御する役割を担うことが示唆された。
また、カンジダ眼内炎の病態解明を目指して、C. albicans、Candida glabrata とCandida parapsilosisを用いて、マウスの眼内炎の発症と病態を解析した。眼内の真菌数はC. albicans感染群で他の2群と比較して有意に多かった。また、病理学的解析及びフローサイトメトリー解析の結果、C. albicans感染群では眼内に好中球や炎症性単球の浸潤を認めたのに対し、C. glabrata感染群及びC. parapsilosis感染群では、炎症細胞の集積をほとんど認めなかった。C. albicans感染群では、眼内のIL-6、CXCL1、CXCL2及びCCL2 の有意な上昇を認めるとともに、これらのサイトカイン・ケモカインの産生と真菌数の間に強い正の相関を認めた(Front Microbiol 2018)。以上の結果より、C. albicansは血流感染に伴い、眼内へ浸潤して増加することで、サイトカイン・ケモカイン産生を誘導し、好中球や炎症性単球を集積させることにより眼内炎を引き起こすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抑制性受容体LMIR3が好中球のカンジダに対する抗真菌活性を抑制的に制御することを明らかにした。また、眼内炎の発症におけるC. albicansとnon-albicans Candidaの違いを見出すとともに、C. albicansによる眼内炎の病態の一端を明らかにした。さらに、眼内炎症例の解析にて、C. parapsilosisによる真菌血症が最も多い場合でも、合併する眼内炎の原因真菌としては、C. albicansが他のカンジダ属真菌と比較して有意に多いことが明らかになった。マウスモデル及び臨床症例での解析から、C. albicansはnon-albicans Candidaと比較して、眼内炎の発症と深く関与することが示唆された。本研究にて構築したマウス眼内炎モデルは、眼内炎の病態の解析や抗真菌薬の効果の判定など種々の解析に有用と考えられる。
以上より、本研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
カンジダ血症・播種性カンジダ症の病態解明を目指して、研究を推進する。
1) 免疫抑制マウスでのカンジダ播種の解析:播種性カンジダ症例では、ステロイド投与による免疫抑制や腸管粘膜障害を認めるケースも多い。その病態の解明を目指し、ステロイド投与により軽度細胞性免疫低下状態を誘導したマウスを用いて、腸管からのカンジダ播種を解析しており、その研究を進展させる。ステロイド投与マウスにて、C. albicans およびC. glabrataなどのnon-albicans Candidaを胃内接種後の真菌の播種を解析するとともに、好中球非減少・軽度細胞性免疫低下状態でのカンジダ播種の病態解明を目指し、免疫応答の解析を行う。
2)細菌・カンジダ共感染マウスモデルでの腸炎およびカンジダ播種の解析:Clostridium difficile は主に入院中の抗菌薬投与症例において難治性の腸管感染をおこすが、最近、市中発症型のC. difficile感染症の増加が注目されている。C. difficile 感染とC. albicans感染による腸炎の発症や増悪、及び真菌の播種について解析を行っており、その研究を進展させる。胃内接種によりC. albicans やC. difficileを腸管内に定着させ、体重の推移、便の性状及び、腸管内や糞便中の細菌や真菌数の推移を解析するとともに、カンジダの播種を解析する。また、病態解明を目指し、免疫応答の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付申請時に、複数の学会参加の旅費を計上したが、参加した学会が当初の予定より少なかった。また、参加した学会は都内開催の学会であったため、旅費の支出がなかった。研究補助員への人件費・謝金を予算に計上したが、当該研究に関して補助員への人件費・謝金を支出する必要がなくなった。そのため、次年度使用額が生じた。
次年度以降に、消耗品の購入や補助員への人件費・謝金の支出を計画している。
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