研究課題/領域番号 |
18K19533
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 敏郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 名誉教授 (10114125)
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研究分担者 |
丸茂 丈史 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (70265817)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
大規模臨床試験により、糖尿病の初期の血糖コントロールが悪いと記憶に残り(メタボリックメモリー)、後年になっても腎症が早く進行することが示された。本研究により、まず糸球体メサンギウム細胞でのエピジェネティック異常が、糖尿病性腎症の進行に関わるかどうか検討する。つぎに見出したエピジェネティック異常を標的としてsiRNAなどを用いて糖尿病性腎症の進行を抑制できるか検討を加える。糸球体へのsiRNAデリバリーにはナノキャリアを用いて、腎臓への核酸医薬の選択的治療にむけた開発を試みる。また糖尿病性腎症生検サンプルを用いてDNAメチル化異常の検討を行う。 DNAメチル化は細胞系列ごとに異なるため、糸球体をsievingで収集した後、既報の方法にしたがって初代培養してメサンギウム細胞を抽出し、メチル化解析を行った。これまでの検討により、コントロールdb/+マウスに比べ糖尿病モデルdb/dbマウスでTGF betaのプロモータメチル化が減少し、転写因子の付着が低下してmRNA発現が上昇していることが明らかになり、論文発表した(Sci Rep 2018) db/dbマウスに対してpolyion complex(PIC)ナノキャリアを腹腔内投与しメサンギウム細胞選択的にsiRNAを導入できるか検討を加えたが、siRNAの導入効率が当初考えていたほど高くないことがわかってきた。原因の一つにdb/dbマウスの糸球体病変が軽度でありナノキャリアを取り込みにくい環境にあることが挙げられた。そこで、db/dbマウスに侵襲を加えて糸球体の炎症がより強く尿アルブミン量が5-10倍となるモデルを作成し、標的となる糸球体遺伝子発現の解析を開始した。また、ヒト糖尿病性腎症患者のDNAメチル化異常の同定にむけ、組織収集を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、従来から進めていた糸球体メサンギウムでのDNAメチル化異常を論文発表することができた。本報告はメサンギウム細胞でのDNAメチル化異常を最初に示したものである。ナノキャリアによるsiRNA導入実験を行ったが、db/dbマウスには導入しにくいことがわかり、より導入が見込まれるモデルの作成に着手した。その結果、糸球体の癒着病変、メサンギウム領域の結節類似病変を伴うモデルの作成をすることができた。本モデルによりsiRNA治療を試みる予定である。しかし、siRNAの導入が困難な場合に備え、新たな治療標的となる分子の同定とそれに対する薬物による治療も同時に試みることとした。
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今後の研究の推進方策 |
進行性db/dbモデルの糸球体病変解析ならびに発現解析実験により、治療標的の選定を進める。ナノキャリアによるsiRNA導入により、当該遺伝子の発現抑制が可能か検討を行う。もし、siRNA導入が困難な場合は、進行性db/dbモデルで見出した新たな標的に対する薬物療法により、糖尿病性腎症進行を抑制する治療法を提示する。また、ヒト糖尿病性腎症でのDNAメチル化異常解明にむけ、解析を進める。
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