研究課題
糖尿病性腎症の進行は妨げることが難しいことから、腎構成細胞へのエピジェネティクス修飾がその発症に関与すると考えられていたが、詳細は不明であった。本研究では糖尿病モデルdb/dbマウスの腎メサンギウム細胞においては、線維化や炎症を誘導するTgfb1遺伝子のプロモーターのDNAメチル化が生じており、そのためTgfb1遺伝子発現が亢進して、腎症の進行に関わっていることを示し、糖尿病性腎症進行の新機序を示した(Sci Rep 2018)。また、db/dbマウスに侵襲を加え、進行型糖尿病性腎症モデルマウスを作成した。このマウスの糸球体では、ミネラロコルチコイド受容体(MR)関連の経路に異常活性化が認められ、コントロールに比べて、炎症性因子を中心に遺伝子発現の異常が認められた。この結果から、MR拮抗薬フィネレノンを投与したところ、糸球体病変、蛋白尿ともに著明に改善することが明らかになった(ASN Kidney Week 2019で発表、論文準備中)。MR関連の経路のなかで、新たな糸球体の治療標的となる因子も認められ、阻害薬により症状が改善することを見出し(論文準備中)、siRNAによる阻害をふくめ検討を進めている。また、ヒト糖尿病性腎症患者のDNAメチル化異常の同定にむけ、組織収集を進めた。その結果、糖尿病性腎症の腎臓では正常に比べてDNAメチル化異常を呈する遺伝子を複数同定した。さらに、糖尿病患者の尿中で、腎機能悪化に関連するDNAメチル化値を見出しした(ASN Kidney Week 2019で発表、論文投稿中)。これらのDNAメチル化変化および変化の見られる遺伝子が治療標的となるか、siRNAを用いた検証実験を進めている。これらの研究により、腎臓の細胞特異的DNAメチル化が、糖尿病性腎症の治療薬としてだけでなく、予知マーカーとして有望であることを提示した。
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