研究課題
我々はこれまでの研究成果のなかで、腎臓や血管において血圧制御に重要な役割を果たすWNKキナーゼ・シグナル伝達系を発見した。WNK4の制御は肥満、耐糖能異常、高血圧の予防といったメタボリック症候群(MetS)に対する包括的治療標的となり得る可能性に注目した(EBioMedicine 2017)。脂肪細胞でのWNKの基質は腎臓や血管と異なることが予測され、FLAGタグ付きWNK4を強制発現した3T3-L1培養脂肪細胞を用いて免疫沈降後、質量分析を用いて相互作用蛋白質の同定を試みたが、有望候補は得られなかった。一方でMetSや慢性腎臓病(CKD)では塩分感受性が増加し、炎症性サイトカインも増加し、高血圧を呈することが知られている。炎症性サイトカインとWNKの関連を明らかにすることは、WNKシグナルを軸とした生活習慣病治療法の探索という本研究計画の主旨に合致したものであり、研究展開する方針とした。3種類のCKDモデルマウス[アリストロキア酸腎症(AAN)、アデニン腎症(AIN)、5/6腎摘(5/6Nx)] 腎臓でのWNKシグナルを検討したところAANとAINの腎臓においてWNK1の増加、WNKシグナルの亢進を認め、塩分感受性高血圧を呈していた。5/6Nxではこの変化が認められなかったことから炎症性サイトカインの関与を疑い、定量評価を行ったところTNFα、IFNγの上昇を認めた。遠位尿細管培養細胞へのTNFα負荷でWNK1の増加を認め、AANマウスにTNFα阻害剤投与で塩分感受性高血圧の改善をみた。炎症に伴う塩分感受性血圧制御の一端を、このWNKシグナルが担っていると推察される結果であった。本研究の結果を、Kidney International 誌(IF: 8.4)で報告した。本研究結果は創薬ターゲットとしてのWNKシグナル制御の妥当性を支持するものであり有用な知見と考えられる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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https://tmd-kid.jp