研究課題
本研究では急性、慢性肝障害モデルマウスを対象として、神経ネットワークによる消化管ホルモンの分泌、肝再生への影響、神経系を介したフィードバック機構による肝再生シグナルの制御機構を解明することを課題とした。経シナプスウィルストレーサーを用いて、肝脳腸を結ぶ神経経路の可視化と同定を行い、そのシグナル伝達の肝病態における変化を明らかにした。さらに化学遺伝学的手法を用いて腸、肝を結ぶ脳神経経路の活動を特異的に促進あるいは抑制し、消化管ホルモンの分泌が増加あるいは低下するか検証した。さらには、本手法を用いて、神経系を介した脳へのシグナル伝達によるフィードバック機構の解析を行い、肝障害時の神経ネットワークの制御、フィードバック機構について検討した。急性、慢性肝障害モデルマウスにおける自律神経系を介した腸管からの消化管ホルモンの分泌制御機構の解明のために、部分肝切除、コリン欠乏食、高脂肪食給餌のほか、メラノコルチン4型受容体欠損マウスを用いた脂肪肝モデルを作成し、肝障害時の肝再生過程、慢性肝障害の病態において、肝脳腸をつなぐ神経経路の消化管ホルモン分泌の発現を検証した。その結果。肝臓からの求心性自律神経がその肝障害のシグナル伝達に重要で、その結果、遠心性に伝達された自律神経シグナルが、消化管ホルモンであるセロトニンやグレリンの発現増加を介して肝臓の病態悪化を防ぐ、生体の恒常性維持のために機能していることが明らかとなった。
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