研究課題/領域番号 |
18K19540
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
秋山 真志 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (60222551)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 角化 / 魚燐癬 / モザイク / 復帰変異 |
研究実績の概要 |
本研究では、先天性魚鱗癬の一種であるichthyosis with confetti(IWC)に着目する。この疾患では、異常な高頻度で「体細胞復帰突然変異によるモザイク現象」(revertant somatic mosaicism, RSM)を生じている。RSMを起こした健常組織は、患者本人の細胞からなり、一般に免疫原性が認められない為、細胞医薬として理想的である。IWCでは、原因遺伝子KRT1、KRT10の特定の領域に変異が集中するが、RSMが高頻度に生じる理由は不明である。本研究では、IWCのモデル細胞系とモデル動物系を世界に先駆けて作成し、それらの系を用いて、RSMの分子的機序を解析する。 本年度の研究では、以下の内容の研究を施行した。 (1)不死化ケラチノサイトを用いたIWC皮膚表皮細胞のモデル系とスクリーニングプラットホームの構築 KRT1のゲノムサイズは約4.5kbと小さく、in situでの遺伝子操作に極めて適しているため、本研究では、KRT1変異によるモデル系の作成を目指した。KRT1遺伝子にCRISPR-Cas9によるヘテロ接合性遺伝子変異導入を行い、野生型および変異KRT1を有する不死化ケラチノサイトを作成し、それぞれ異なる蛍光蛋白で標識した。これらのIWCモデル細胞をスクリーニング系として、RSMを促進する条件についてのケミカルクスリーニング、DNAストレス、siRNAスクリーニングなどの各種スクリーニングプラットホームの構築を試みた。 (2)薬剤投与により誘導可能なIWCモデルマウスの作成 CRISPR-Cas9によりKrt1-EGFPノックインマウスの作成を目指した。また、表皮特異的CreER発現マウスは購入した。4-OHT誘導性mRFPおよび変異KRT1発現カセットをCRISPR-Cas9によるゲノム編集によりヘテロ接合性に導入したマウスを、上記2種のマウスと掛け合わせることにより、IWC症状を薬剤誘導性に発症するモデルマウスの作成を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の2つのプロジェクトを並行して進めて来ている。 1.不死化ケラチノサイトを用いたichthyosis with confetti(IWC)における皮膚表皮細胞のモデル系とスクリーニングプラットホームの構築 本研究では、ケラチン1の遺伝子、KRT1のゲノムサイズは約4.5kbと小さく、in situでの遺伝子操作に極めて適していることから、KRT1変異によるモデル系の作成を行なっている。KRT1遺伝子にCRISPR-Cas9によるヘテロ接合性遺伝子変異導入を行い、野生型および変異KRT1を有する不死化ケラチノサイトを作成し、それぞれ異なる蛍光蛋白で標識した。これらのIWCモデル細胞をスクリーニング系として、復帰体細胞変異を促進する条件についてのケミカルクスリーニング、DNAストレス、siRNAスクリーニングなどの各種スクリーニングプラットホームを構築することを目指した。このIWCモデル細胞の作成において、KRT1遺伝子変異導入効率を高めることに試行錯誤を要したため、研究の進捗にやや遅れを生じている。 2.薬剤投与により誘導可能なIWCモデルマウスの作成 CRISPR-Cas9によりKrt1-EGFPノックインマウスの作成を試みた。また、表皮特異的CreER発現マウスは購入した。4-OHT誘導性mRFPおよび変異KRT1発現カセットをCRISPR-Cas9によるゲノム編集によりヘテロ接合性に導入したマウスを、上記2種のマウスと掛け合わせることにより、IWCの表現形を薬剤誘導性に発症するモデルマウスの作成を目指した。変異KRT1発現カセットをヘテロ接合性に導入したマウスの作成時の条件設定に試行錯誤を要したため、研究の進捗に遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究において、具体的には、以下の三つのプロジェクトを推進する方針である。 (1)不死化ケラチノサイトを用いたIWC皮膚表皮細胞のモデル系とスクリーニングプラットホームの構築:前年度の研究の若干の遅れのため、本研究でのKRT1変異によるモデル細胞系の作成実験の一部が、未施行の状態である。この未施行部分を、次年度の前半に行い、KRT1遺伝子にCRISPR-Cas9によるヘテロ接合性遺伝子変異導入を行い、野生型および変異KRT1を有する不死化ケラチノサイトを作成し、それぞれ異なる蛍光蛋白で標識したIWCモデル細胞を完全に樹立する。その細胞をスクリーニング系として、RSMを促進する条件についてのケミカルクスリーニング、DNAストレス、siRNAスクリーニングなどの各種スクリーニングプラットホームを完成させる。 (2)薬剤投与により誘導可能なIWCモデルマウスの作成:CRISPR-Cas9によりKrt1-EGFPノックインマウスの作成についても、一部、完了していない実験があるため、その部分を、次年度の前半に完了させる。4-OHT誘導性mRFPおよび変異KRT1発現カセットをCRISPR-Cas9によるゲノム編集によりヘテロ接合性に導入したマウスを、CRISPR-Cas9によるKrt1-EGFPノックインマウス、表皮特異的CreER発現マウスと掛け合わせることにより、IWC症状を薬剤誘導性に発症するモデルマウスを確立する。 (3) RSM発生の分子機序の解析とRSMの発生を制御しうる低分子化合物の探索:上記モデル細胞系、モデルマウスを用いて、種々の条件下でのRSM発生頻度、発生機序を解析する。さらに、低分子化合物ライブラリを用いたスクリーニングにより、RSMの発生を制御しうる低分子化合物を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)次年度使用額が生じた理由 不死化ケラチノサイトを用いたichthyosis with confetti(IWC)における皮膚表皮細胞のモデル系とスクリーニングプラットホームの構築において、KRT1遺伝子変異導入コンストラクトを導入した不死化ケラチノサイトを作成しする過程で、KRT1遺伝子変異導入効率を高めることに試行錯誤を要したため、研究の進捗に遅れを生じ、表皮細胞モデル系の作成実験を次年度も施行する必要が生じた。また、薬剤投与により誘導可能なIWCモデルマウスの作成研究において、変異KRT1発現カセットをヘテロ接合性に導入したマウスの作成時の条件設定に試行錯誤を要したため、研究の進捗に遅れを生じた。そのため、表皮細胞モデル、及び、モデルマウス作成実験の一部を、次年度も施行することとなった。 (2)使用計画 次年度の前半に、不死化ケラチノサイトを用いたIWC皮膚表皮細胞のモデル系とスクリーニングプラットホームの構築のための、野生型および変異KRT1を有する不死化ケラチノサイトを作成する。また、薬剤投与により誘導可能なIWCモデルマウスの作成研究も一部、次年度の前半に行う。それらの際の試薬、消耗品費用として、次年度使用費を使用する。
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