研究課題
本研究は膵臓がんを対象とし、単一細胞での網羅的遺伝子発現解析技術を用いたヒト膵がん臨床試料の解析と、ゲノム編集技術による革新的膵がんマウスモデルを用いた基礎的研究により、膵がん転移の分子基盤を解明することを目的とする。本年度は生体内での遺伝子改変を行う膵癌マウスモデルの樹立を試みた。昨年度に検討したエレクトロポレーションによる遺伝子導入法を用いて、Cre発現ベクターをKrasG12D/+ ;p53 fl/+マウスに導入し、Pdx1-Cre Tg/+; KrasG12D/+ ;p53 fl/+マウスで認めた膵発癌が再現されるかどうかについて検討を行った。Cre発現ベクターを導入したKrasG12D/+ ;p53 fl/+マウスを長期飼育し、CTによる画像観察を行ったところ、導入3.5ヶ月において膵尾部に5mm大の腫瘍形成を認め、2週間後には18mmまで増大した。解剖を行ったところ、膵尾部に結節形成を認めたが、明らかなマクロでの肝・肺転移は認めなかった。また、組織学的解析ではやや未分化な膵癌を呈していた。一方、野生型マウスにCre発現ベクターを導入した群では同様の腫瘍を全く認めなかった。発症した膵腫瘍の解析を行ったところ、非腫瘍部と比し、腫瘍部でERKのリン酸化亢進を認め、また腫瘍部においてp53 flox alleleの発現低下を認めたことから、Creの導入によりp53遺伝子のヘテロ欠損、Krasの活性化が生じ、膵癌が発症したと考えられた。以上から、エレクトロポレーション技術を用いることで、生体内で膵にプラスミドを導入し、発癌を生じさせる系の確立に成功した。
3: やや遅れている
本研究は膵臓がんを対象とし、単一細胞での網羅的遺伝子発現解析技術を用いたヒト膵がん臨床試料の解析と、ゲノム編集技術による革新的膵がんマウスモデルを用いた基礎的研究により、膵がん転移の分子基盤を解明することを目的とする。マウスモデルの樹立については順調に進んでいるが、ヒト検体を用いた解析に関しては、適切な症例の選択に難渋しているためやや進捗が遅れている。
次年度においては、ヒト検体を用いた解析を重点的に行い、膵がん転移の分子基盤解明を目指す。
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