研究実績の概要 |
2018年度中にin vitro構造解析を集中的に行ったため(Shigematsu et al., J. Cell Biol. 2018)、2019年度は細胞レベルの構造解析手法の確立を行った。まずは、健常者由来のiPS心筋細胞を用いて、電子顕微鏡グリッド上での培養、凍結置換処理、電子顕微鏡観察、電子線トモグラフィー撮影・立体構築をルーチン化した。続いて、健常者由来およびラミン変異を持つ重症拡張型心筋症患者由来のiPS心筋細胞を凍結置換処理し、電子線トモグラフィー法で観察・比較した。これにより、ラミン変異では核膜の歪み、核ラミナの形成異常、サルコメアの配列異常を来たすことが明らかとなった。さらに、これらの異常をより高分解能な立体構造として描出するために、クライオ電子線トモグラフィー法の確立を行った。そのためには、急速凍結処理をした心筋細胞を200-300 nmの厚さに削る必要がある。そこで、健常者由来のiPS心筋細胞を用いて、FIB-SEM(収束イオンビーム走査型電子顕微鏡)による切削条件を確立し、クライオ電子線トモグラフィーにより撮影、立体構築を行った。その結果、健常者のラミンネットワークの立体構造を高分解能で可視化することに成功した。今後は、拡張型心筋症患者由来のiPS心筋細胞のクライオ電子線トモグラフィー法による立体構造解析へと進む。
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