研究課題/領域番号 |
18K19551
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中里 雅光 宮崎大学, 医学部, 教授 (10180267)
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研究分担者 |
柳 重久 宮崎大学, 医学部, 助教 (60404422)
坪内 拡伸 宮崎大学, 医学部, 助教 (60573988)
松尾 彩子 宮崎大学, 医学部, 医員 (40776332) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞運命決定 |
研究実績の概要 |
発生期における中枢気道と末梢肺組織の上皮前駆細胞内分子の意義を、「細胞ダイナミクスと細胞老化が統制する、幹細胞の運命決定と臓器の形態形成」という独創的な観点から解明する。本研究の推進は普遍的な臓器形成プログラムや発生異常に関与する疾患の理解につながる。また生後におこる外界からの損傷からの組織修復・再生機構の理解を飛躍的に前進させ、特発性肺線維症や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器リモデリング疾患やがんの病態解明と、これらの難治性疾患の治療戦略の創出に展開できる。本年度は、肺上皮細胞特異的Pten欠損マウス(ShhCreGFP:Ptenfloxマウス)を用い、老化細胞除去薬によるレスキュー効果を解析した。E12.5、E14.5、E16.5の母胎にダサチニブ+クエルセチンを経口投与した。その結果、仔の生存率の差異はみられなかったが、p16陽性細胞の減少、ならびに肺胞腔面積と肺胞壁厚で示される肺胞形成不全は軽減していた。さらにE18.5マウス肺を用いた解析により、ShhCreGFP:Ptenfloxマウスのsacculation、alveolization障害はI型肺胞上皮細胞の扁平化障害が明らかになった。E18.5マウス単離肺上皮を用いたalpha-tubulinとgamma-tubulinの二重免疫染色の結果、ShhCreGFP:Ptenfloxマウス肺上皮でみられる細胞老化は、紡錘体形成不全が原因であること、染色体コングレッション制御分子EG5のリン酸化が亢進していることが明らかになった。来年度、オルガノイド解析を行い、lung alveolizationでの肺胞上皮細胞分化における肺上皮Ptenの役割を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要にあるように研究計画は当初の予定を超えて順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)肺胞前駆細胞でのPten/RhoA/Ror2欠損が与える肺胞オルガノイド形成能への影響: E18.5の肺上皮細胞特異的Pten/RhoA/Ror2欠損マウス肺を用い、肺胞前駆細胞を単離する。線維芽細胞とRhoA/Ror2/Pten各遺伝子欠損肺胞前駆細胞をそれぞれマトリゲル上で共培養する。培養21日後でのコロニー数を測定する。コロニー形成能(肺胞オルガノイド)について、サイズを測定する。AT1マーカー(podoplanin, HopX, AQP5)とAT2マーカー(Sftpc)での二重免疫染色を行い、AT2とAT1への分化能の影響を解析する。 (2)肺胞前駆細胞特異的RhoA/Ror2/Pten欠損によるセクレトーム:レセプトームの変化: 単離済みのE18.5肺上皮細胞特異的Pten欠損肺胞前駆細胞を用い、populatoin RNAシーケンス解析を行う。 (3) 肺胞/細気管支前駆細胞RhoA/Ror2/Pten欠損による上皮統合性と細胞骨格構築への影響 E18.5マウス肺とE14.5マウス肺を用い、電子顕微鏡にて上皮細胞間および上皮-基底膜間の解離の有無、tight junctionの消失、仮足(pseudopodia)形成の有無を解析する。基底膜構成への影響をCol2a1とlamininの免疫染色と全肺の定量PCRで解析する。細胞骨格への影響を、安定化微小管(acetylated tubulin)の細胞内局在(基底側、頂端面、側面)で解析する。各々の単離EYFP陽性上皮前駆細胞を用い、スクラッチテストで遊走能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子組換えマウスの繁殖状況により次年度使用額が生じた。次年度、遺伝子組換えマウスを用いたオルガノイド解析を行う予定である。
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