研究実績の概要 |
申請者らのこれまでの肥満マウス・モデルの遺伝学的解析により、脂肪細胞に発現する受容体ALK7の遺伝子変異は、脂肪分解を亢進させ、脂肪の蓄積すなわち肥満を抑制することが明らかになっている。しかしながら、ALK7受容体に結合してこれを活性化する分子(リガンド)は不明であった。本研究では、ALK7のリガンドがGDF3という分子で、GDF3が脂肪組織中のマクロファージと呼ばれる白血球の1種から産生されること、そしてその産生は、食事摂取後や肥満状態で分泌されるインスリンによって増強されることを明らかにした。脂肪組織中のマクロファージ・脂肪細胞間で働GDF3-ALK7シグナル系は、マウスの個体レベルで、インスリンによる脂肪分解抑制・脂肪蓄積亢進作用において実際に機能していることが証明され、これまで脂肪細胞に直接働くと考えられてきたインスリン作用に関する、新たな分子機構を提示するものである。また、本シグナル系は、食事摂取後の余分の栄養素を脂肪として蓄積させる生理的な役割を持つと同時に、活性化状態が慢性的に持続すると脂肪蓄積を助長すると考えられ、現代社会で増えている肥満の病態に深く関わっていると考えられる。以上の知見は、米国糖尿病学会誌Diabetesに発表された。 Bu Y, Okunishi K, Yogosawa S, Mizuno K, Irudayam MJ, Brown CW, and Izumi T (2018). Insulin regulates lipolysis and fat mass in adipocytes by upregulating growth/differentiation factor 3 in adipose macrophages. Diabetes, 67, 1761-1772.
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