研究課題
申請者らは、ポリコーム抑制性複合体1 (PRC1) 構成因子であるBmi1 を全身で欠損させたマウスの骨髄ニッチが減少し、骨髄の脂肪化が著明に進行すること、この所見がヒトの加齢に伴い認められる骨髄の脂肪化と極めて類似したものであることを以前報告した(Oguro et al., J Exp Med 2006)。しかしながら、このマウスではBmi1 欠損により造血幹細胞の機能も障害されるため、よりニッチ細胞特異的なモデルが必要であると考えられた。そこで、レプチン受容体遺伝子座にCre が挿入されたLepR-Cre マウスを用いてBmi1 を骨髄ニッチの代表である傍血管間葉系ストローマ細胞特異的に欠損させたところ、加齢とともに骨髄の脂肪化が著明に進行し、造血幹細胞・前駆細胞が有意に減少すること、これに伴い髄外造血が亢進することを見出した。これは全身でBmi1 を欠損させたマウスの骨髄脂肪化よりも進行に時間を要するが、ニッチ細胞特異的な現象であり、加齢ヒト骨髄モデルとして有用である。また、この脂肪化はマウスに放射線照射を行ったあとの骨髄再生時により顕在化することが確認された。意外なことに、脂肪化の進行に伴い造血幹細胞の数は減少するものの、その機能は保たれることも確認された。次に、この脂肪化の過程に関わるニッチ責任因子の同定を試みた。脂肪髄モデルマウスより、LepR陽性傍血管間葉系ストローマ細胞ならびに脂肪細胞を分取し、RNA シークエンスにより、野生型コントロールと比較して発現変動する遺伝子群を抽出した。Nr2f2 (COUP-TFII)などの脂肪分化制御遺伝子がBmi1により直接的にその発現が抑制されることが明らかとなった。以上のデータから、Bmi1が骨髄ストローマ細胞の脂肪分化を抑制することにより、造血幹細胞ニッチの恒常性を保つことが明らかとなった。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Exp Hematol.
巻: 76 ページ: 24-37
10.1016/j.exphem.2019.07.006
Biochem Biophys Res Commun
巻: 521 ページ: 612-619
10.1016/j.bbrc.2019.10.153
Cancer Sci
巻: 110 ページ: 3695-3707
10.1111/cas.14207
Blood Adv
巻: 3 ページ: 2537-2549
10.1182/bloodadvances.2018028522
Blood
巻: 133 ページ: 2495-2506
10.1182/blood.2019000468
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/molmed/