研究課題/領域番号 |
18K19560
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
篁 俊成 金沢大学, 医学系, 教授 (00324111)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | セレノプロテインP / ヘパトカイン / 2型糖尿病 / インスリン抵抗性 |
研究実績の概要 |
我が国を含めた先進国では、高齢化に伴い糖尿病や骨格筋量と骨格筋力の低下(サルコペニア)が増大しており、運動効果を高める治療が求められている。申請者は、肝臓から分泌されるセレノプロテインP(SeP)が、骨格筋での受容体LDL receptor related protein 1(LRP1)を介して運動抵抗性を誘導することを明らかにした。そこで本研究の目的は、肝臓由来SeP-骨格筋受容体LRP1系を標的とした運動効果増強薬を開発することである。具体的には、SePプロモーター下分泌型ルシフェラーゼを安定発現する肝細胞株を評価系とした、既存臨床薬のスクリーニングと分子間相互作用解析システム(Biacore)を用いた受容体結合阻害薬のスクリーニング、さらにSeP中和抗体のスクリーニングを行い、候補となった薬剤を用いてin vivoで機能実験を行う。これらの系によって、優れた運動効果増強薬が得られれば、2型糖尿病、肥満症、脂肪肝といった運動療法が効果を有する多くの疾患に対しての新しい治療になる。さらに運動療法が持つ寿命延長効果を増強する健康寿命延長薬の開発につながる。 今年度はSePプロモーター下分泌型ルシフェラーゼを用いたスクリーニングを行った。薬剤ライブラリーは、東京大学創薬支援センター提供の低分子化合物(既存臨床薬1500種類)を使用した。その結果、SePプロモーターによる発現を強く制御する50種類の薬剤を同定することができた。さらに、スクリーニング系とは異なる細胞系、マウス初代培養肝臓細胞やヒト肝臓細胞株を用いて、SePの遺伝子発現量やタンパク質量の変化、インスリンシグナルへの影響を精査した。また、マウス個体への投与も行い、血中SePタンパク質濃度や血糖値の変化を調べた。これらの結果、最終的にSeP抑制薬として、3つの薬剤に絞り込むことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にして既存臨床薬1500種類から3種類の薬剤に絞り込むことができた。また、分子間相互作用解析システムを用いた受容体結合阻害薬のスクリーニング、SeP中和抗体のスクリーニングも進めている。
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今後の研究の推進方策 |
先行して進んでいる既存臨床薬スクリーニングによって得られた3種類の薬剤については、既存の作用、副作用の除去、SeP抑制の増強、および新たな知財としての価値を高める目的のため、大阪大学薬学研究科構造展開ユニットの協力を得て、構造的に類似性のある薬剤のスクリーニング、加えて薬剤の構造展開を実施し、ツール化合物や開発候補化合物を創製する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が生じたので繰り越したが、ほぼ計画通りに執行している。
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