研究課題
ヒト肝臓の遺伝子発現解析を利用して、2型糖尿病で発現が上昇する肝臓由来分泌タンパクとしてセレノプロテインP(SeP)を同定し、SePが全身にインスリン抵抗性を誘導することで高血糖を発症させることを明らかにした。その後、SePが筋肉に作用することで運動の健康増進効果を減弱・消失させることを明らかにし、SePの過剰が血管新生障害、膵インスリン合成障害、心筋梗塞増悪などの様々な全身病態を惹起することも報告してきた。これらの結果から、肝臓でのSeP発現を抑制することで、高血糖・インスリン抵抗性の軽減のみならず、血管新生増強、膵インスリン合成上昇、心筋梗塞改善など様々な糖尿病全身病態の改善効果が得られることが明らかとなった。そこで、SePの肝臓での産生を強力かつ特異的に抑制する低分子化合物を同定し、この化合物が糖尿病モデルマウスで全身病態を改善することを精査する。我々は既存の臨床で使用されている化合物のコンパウンドライブラリーを用いた1次スクリーニングによって、肝細胞でSePの転写活性を強力にかつ特異的に抑制する低分子化合物を数十種類同定した。さらにこれらの中から毒性の低い3(X、Y、Z)化合物選んだ。このうちX化合物は構造展開が難しく、副作用の影響も大きいため、肝臓細胞株を用いて、SePの遺伝子発現量やタンパク質量の変化、インスリンシグナルへの影響を精査し、また、マウス個体への投与も行い、血中SePタンパク質濃度や血糖値の変化を調べ、学術論文として投稿した。構造展開の可能性がある2(Y、Z)化合物については、類似既存薬および周辺化合物ライブラリーを用いて2次スクリーニング(それぞれYについて70化合物、Zについて160化合物)を行った。結果、Yについては類似および周辺化合物に抑制効果がなかった。Zについては、周辺化合物においても一次スクリーニングと同程度の抑制効果があった。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
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