研究課題
さまざまな臓器に発症するアレルギー疾患では、特にその重症化に伴い、特異抗原により強く反応するようになると共に、非特異的刺激に対しても症状が誘発されるようになる状態、すなわち過敏性亢進が共通してみられる。しかし、各アレルギー患者の局所に存在するどの細胞が、どのような分子の役割によって過敏性亢進を誘発するのか、解明されていない。そこで本研究では、1)これまでの概念を覆す新たな発見、2)T細胞サブセットの共通性、3)適切な比較解析コントロール、4)オリジナル解析ツールでの検証をキーポイントとし、「各種T細胞サブセットが共通して産生/発現する分子によって過敏性亢進は引き起こされる」という仮説を検証する流れで過敏性亢進誘発因子同定を目指している。本年度はまず、研究実施計画に従い、T細胞の刺激培養により発現する分子に関し、培養上清、細胞ライセートにおける蛋白およびmRNAレベルで、それぞれプロテオームおよびマイクロアレイ解析を実施している。過敏性亢進を誘発するTh1, Th2, Th9, Th9+ステロイドおよびTh17細胞の一群と、ナイーブCD4陽性T細胞およびTh2細胞+ステロイド群の間で比較した結果、前群のみで共通に発現がみられるものが見いだされつつある。本研究において、T細胞サブセットに共通する過敏性亢進誘発因子の同定を目指すことは、T細胞研究の新潮流を切り開くと共に、アレルギー疾患領域に、より新たな概念の治療法開発に向けたパラダイムシフトを生むことが期待される。
2: おおむね順調に進展している
過敏性亢進誘発因子の探索研究推進中:T細胞の刺激培養により発現する分子に関し、培養上清、細胞ライセートにおける蛋白およびmRNAレベルで、それぞれプロテオームおよびマイクロアレイ解析を実施中。過敏性亢進を誘発するTh1, Th2, Th9, Th9+ステロイドおよびTh17細胞の一群と、ナイーブCD4陽性T細胞およびTh2細胞+ステロイド群の間で比較した結果、前群のみで共通に発現がみられるものが見いだされつつあり、次年度以降の機能検証ステップに進める見込み。
候補分子の機能検証:候補分子は、以下のアッセイ系で機能を検証するのと並行して、既知情報や各臓器における過敏性亢進誘発反応の特性、すなわち平滑筋収縮とくしゃみ反応における構造、刺激伝達経路等の相違、ならびに神経伝達物質等に対する反応の共通性等も踏まえた絞り込みを行う。<抗原特異的T細胞クローンマウスを用いた過敏性亢進の評価>本マウス個体およびそのT細胞移入マウスに抗原を点鼻チャレンジして鼻粘膜過敏性亢進を誘発する。候補分子における過敏性亢進誘発因子としての機能を、下記マテリアルと方法で評価する。① リコンビナント蛋白の点鼻投与、② 中和抗体の静脈内投与、③ 移入T細胞へのsiRNA導入、④ 遺伝子改変マウスと交配したクローンマウス個体とそのT細胞移入マウス<平滑筋収縮アッセイによる評価>マウスまたはヒト気管支平滑筋収縮アッセイ系におけるアセチルコリン等、既知の収縮質による反応に対する増強効果を、下記マテリアルと方法で評価する。① リコンビナント蛋白を添加、② 中和抗体をT細胞刺激培養上清と同時添加、③ siRNA導入したT細胞刺激培養上清を添加
計画額と大幅な相違なくほぼ予定額通り使用した。本年度は人件費が計画額以上に必要となったため、主に次年度使用額は人件費での使用を見込む。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Allergology International
巻: 67 ページ: S25~S31
10.1016/j.alit.2018.05.002