研究実績の概要 |
アカゲザルエイズモデルを用いた研究代表者のこれまでの研究から、ミリスチル化ウイルスタンパク質に由来するN末端リポペプチドフラグメントが細胞傷害性T細胞の新たな標的抗原となることが実証され、リポペプチド提示分子として2種のアカゲザルMHCクラスI分子(Mamu-B*098, Mamu-B*05104)が同定された。一方、ヒトリポペプチド提示分子は未同定である。そこでアカゲザルリポペプチド提示分子の詳細なX線結晶構造解析から見えてきた構造学的特質を起点として、ヒトリポペプチド提示分子の同定を試みた。8種のヒトHLAクラスI重鎖を絞り込み、そのリコンビナントタンパク質を調製した。これらを用いて、ベータ2ミクログロブリンとモデルリポペプチドの存在下にバッファーシステムにおけるリフォールディングを行い、逆相液体クロマトグラフィーによりリガンド依存的複合体形成を評価した。その結果、少なくとも2種のヒトHLAクラスI分子(LP1a, LP1cと表記する)がリポペプチド結合能を有することが判明した。そこで、これらの複合体の結晶化を行い、高解像度でのX線結晶構造を解明することに成功した(未発表)。そこで、アルファ3ドメインをマウス由来のものに置換したLP1a, LP1cを発現するトランスジェニックマウスを作出し、安定的な継代を行なった。さらにLP1aトランスジェニックマウス脾臓細胞がLP1aタンパク質を発現していることを確認した。これらのマウスに種々アジュバントと混合したモデルリポペプチド抗原を投与し、リポペプチド特異的T細胞応答の存在とその質の評価を進める段階に到達した。すでに予備的結果が得られつつあり、本萌芽的研究によりヒトリポペプチド免疫研究の出発点となる学術基盤が構築された。
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