研究課題
末梢性T細胞リンパ腫・非特定型(PTCL-NOS)は、極めて予後不良な疾患であり、新たな治療戦略の確立が急務である。そのためには、まず層別化による疾患概念の整理が必要である。なぜなら、WHO分類において、PTCL-NOSはいずれの分類にも相当しない分類不能型、と定義されることからも分かるとおり、様々な病態の疾患を内包する、ヘテロな疾患概念だからである。病態に基づいた層別化により、病態や治療予後の観点で均一な集団を切り取り、そのメカニズムを明らかにすることで、新規治療法の開発を目指すことが本研究の骨子である。この目標を達成するために、まずPTCL-NOS患者より取得したホルマリン固定検体における、nCounterによる網羅的遺伝子発現解析を行った。予定していた68症例の解析を終了した。その結果、PTCL-NOSにおいては、腫瘍細胞そのものではなく、周囲微小環境中のB細胞・樹状細胞・マクロファージなどの微小環境免疫細胞に関連した遺伝子発現によってより明確に層別化され、さらに各群の予後が大きく異なることを明らかにした。これに基づき、微小環境関連遺伝子発現パターンによる予後層別化モデルを提唱し、これを論文発表した。さらに上記の成果で見出された予後不良なマクロファージ群には、同細胞に由来するPD-L1が高発現が特徴的に認められたことから、同分子による腫瘍免疫逃避機構が不良な転機に寄与している可能性を考え、これが治療標的となりうるのではないかと考えた。そこで、PD-1阻害薬であるNivolumabのPTCLに対する適応拡大を目指した臨床研究を実施している。この研究は、既存の治療では治癒を期待できない予後不良患者の一部に対してPD-1阻害剤が奏効する可能性を明らかにするばかりでなく、免疫チェックポイント阻害剤におけるプレシジョンメディシンの実現に資するものである。
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Blood.
巻: - ページ: -
10.1182/blood.2019003749.
10.1182/blood.2019002194.
bioRxiv
doi.org/10.1101/833947