研究課題
B細胞を含むすべての血液・免疫細胞は造血幹細胞から作られる。その過程で多能性の造血幹細胞は徐々に分化能が限定されていき、最終的にB細胞にしかなれない前駆細胞に運命決定される。この運命決定は様々な転写因子やエピジェネティック因子によって制御されているが、詳細は明らかでない。特に、単一細胞レベルの転写制御機構は不明である。申請者らは最近、B細胞への運命決定における分子機構を調べることの出来る新しい分化誘導系を開発した(Ikawa et al.Stem Cell Reports,2015)。この方法を用いて経時的に1細胞RNA-seq 解析を行い、B細胞系列への運命決定における転写ネットワークを明らかにした(Ikawaet al. Genes Dev, 2018)。そこで本研究ではこの培養系を用いて、B細胞分化に重要な遺伝子のコンディショナル欠損マウスの骨髄細胞からiLS細胞を作成し、これを用いて多能前駆細胞からB細胞への運命決定におけるダイナミックなエピゲノム制御を1細胞レベルで明らかにすることを目的とする。本年度はB細胞分化に重要であるポリコームタンパクPCGF1のコンディショナル欠損(cKO)マウスの骨髄細胞からiLS細胞を作成した。このPCGF1cKO iLS細胞からB細胞への分化誘導を行ったところ、B細胞への分化は顕著に阻害されていた。次に、この分化誘導系を用いて経時的にサンプルを採取し、RNA-seq解析を行ったところ、PCGF1欠損iLS細胞ではHmga2やTal1などが脱抑制されていた。さらに、この経時サンプルを用いてChIP-seq解析を行ったところ、標的遺伝子座のH3K27me3レベルが有意に低下していた。これらの結果から、PCGF1はミエロイド系遺伝子や幹細胞系遺伝子の発現を抑制することにより、B細胞分化を促進することが明らかとなった。
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PNAS
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10.1073/pnas.1907883116
臨床免疫・アレルギー科
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