研究課題
DNAメチル化やヒストン修飾等のエピゲノム情報は発生分化や細胞リプログラム等、細胞運命を決定する鍵となり、その異常は癌など様々な疾患の原因となる。それゆえエピゲノム修飾を標的とした機能性分子による治療法の開発が求められているが、従来の機能性分子単剤では作用領域がゲノム全体に及ぶため、阻害効果が過多となる弊害がある。この問題点を解決する手段として本研究では、DNA配列認識能を有するピロール-イミダゾールポリアミド(PIP)を融合させ、機能性分子の作用領域を局所化させる技術開発を行った。ヒストン脱メチル化酵素阻害剤NCD38に対してPIPとの縮合反応ができるようカルボキシル基などを導入した誘導体を作成し、4~6塩基のPIPと縮合して細胞へ投与することで、阻害剤親分子がゲノムワイドに活性化するのに対し、PIPを縮合した開発小分子が、PIPが認識する塩基配列が豊富な領域で選択的に活性化作用が認められることを昨年度までに報告しているが、本年度はその化学的な合成法について改良し論文報告した。さらに、ヒストン脱メチル化酵素阻害剤NCD38の縮合剤の構造を大幅に簡略化したプロトタイプ化合物を作成し、また同様にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤も大幅に簡略化した構造でPIPと縮合し、それぞれ腫瘍細胞へ投与した。増殖抑制作用および領域選択的なエピゲノム阻害効果を認めた。並行して標的となるエピゲノム異常領域を同定する解析では、胃上皮細胞に発癌性ストレスとして EBウイルス感染システムを用いて、また前立腺癌では再発形式として臨床的に問題となっている去勢抵抗性前立腺癌において、それぞれ異常に認めるエピゲノム変化を同定し、転写因子の認識モチーフなど開発小分子の治療標的となり得る有望な候補配列を同定した。本研究課題からの発展としてこれらの配列を認識するPIPを用いた縮合化合物を合成していく。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Heterocycles
巻: 99 ページ: 891-905
DOI: 10.3987/COM-18-S(F)57
https://www.m.chiba-u.ac.jp/class/moloncol/