研究課題/領域番号 |
18K19574
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳衛 宏宣 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 客員研究員 (30212278)
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研究分担者 |
高橋 浩之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70216753)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 中性子捕捉療法 / ボロノドデカボラン / アルブミン複合体 / アルブミン受容体 / ポリエチレングリコール / 膵臓癌 |
研究実績の概要 |
膵臓癌においては、癌細胞周囲に線維組織等の間質組織が厚いために、通常の抗癌剤を封入したナノデリバリーシステムを用いても、有効な抗腫瘍効果が出ていない状況である。我々は、癌細胞に発現しているアルブミン受容体を介してボロン化合物を選択的にデリバリーし、中性子捕捉療法を用いて腫瘍制御を図りたい。 まず、ボロノドデカボラン結合ポリエチレングリコール修飾アルブミン(10-BSH-PEG-BSA)の合成を行った。10BSH合成複合体水溶液にヒト膵臓癌細胞株AsPC-1細胞を反応させ熱中性子照射により、細胞障害効果を得ている(10B濃度を100ppmに調整)。10BSH合成複合体を用いて担癌マウスモデルへの応用が可能かを検討するために、AsPCー1細胞をヌードマウスに皮下投与し担癌マウスモデルを作成して、腫瘍内投与を行い、40ミクロン厚のマウスの全身切片作成を行った。作成切片を-20度で凍結乾燥させ、CR39 アルファ線 Detector板に張り付け、日本原子力研究機構JPARCにおいて冷中性子を照射し(2 x 10E10 n/cm2)、中性子ラジオグラフィーを行った。NaOH法にて、エッチングを行い、腫瘍局所にボロン原子が集積していることが判明した。10-BSH-PEG-BSAにおいては腫瘍内投与により濃度が約40ppmであることより、腫瘍内投与法においては、熱中性子反応を生じる量のボロン原子を腫瘍組織内に送達できることが判明した。 この結果を受けて、癌細胞株のアルブミン受容体の発現量の確認、癌細胞内のボロン原子の同定、アルブミンのヒト化での検討およびJTS-1やInportinβの結合効果の確認、静脈内投与法における腫瘍内濃度の測定とイメージング、熱中性子照射による治療効果、等を、さらに検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ボロノドデカボラン結合ポリエチレングリコール修飾アルブミン(10-BSH-PEG-BSA)の研究において、まず今までのBSAを用いて、臨床応用に展開できるかの判別を行うために中性子ラジオグラフィーを行い、腫瘍内投与法での可能性を示すことが必要と思われたために、時間を要した。腫瘍内投与法における組織レベルでのボロンイメージングは成功した。この結果を得て、10-BSH-PEG-BSAの癌細胞内への送達性を検討することにした。さらに、FITCでなく、ボロン原子そのものを同定するために、原子間力顕微鏡を用いてのイメージング法を行うことにした。 このために、実験がやや送れているが、In vivo実験において、癌細胞のボロンイメージング法を行い、照射実験へとつなげていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の計画として、①癌細胞株のアルブミン受容体の発現量の確認、②原子間力顕微鏡を用いた中性子ラジオグラフィーによる細胞内10B送達の確認を行い、細胞内10B デリバリーのImagingを行う。③アルブミンのヒト化での検討およびJTS-1やInportinβの結合効果の確認、細胞質内(JTS-1)・核内移行複合体(Inportinβ)修飾10B-PEG-BSAを用いた担癌マウス(ASPC-1やColon26)でのin vivo実験による10B導入を行う(腫瘍内投与法、静脈投与法)。ICP-Masを用いて腫瘍、血液、各種臓器における10B 濃度を測定する。④京都大学複合原子力研究所において熱中性子照射によるNCTの治療効果確認を確認する(TUNEL染色によるアポトーシス機序の確認・抗LC-3およ びオートファジー小体チェックによるオートファジー機序確認)。
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