研究課題
トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は生物学的に悪性度が高く、薬物療法への抵抗性を生じやすく予後不良である。近年の網羅的遺伝子解析にも関わらず、TNBCは発癌や癌の悪化に寄与するドライバー遺伝子変異に乏しく、その病態メカニズムは未だ不明の点が多い。スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、脂質でありながらタンパク質と同じように情報伝達物質として働く脂質メディエーターであり、癌で重要な役割を担っている。私達は、「TNBCの高悪性度の病態は、遺伝子やタンパク質の異常だけでは説明がつかず、その背景には脂質メディエーターを介した癌代謝制御機構が関与している」と仮説を立て、本研究を企画した。本研究の目的は「脂質メディエーター・S1Pを介した癌代謝制御機構に着目してTNBCの病態メカニズムを解明し、新規治療法開発への研究基盤を確立すること」である。本研究実績として、TNBCマウスモデルを用いて、癌の発育進展においてS1Pが重要な役割を果たしていることが分かった。乳癌細胞のメタボローム解析により、S1P産生酵素が薬剤耐性に関わる癌代謝経路に寄与していることを発見した。臨床検体のリピドミクス解析により、TNBC患者におけるスフィンゴリン脂質の動態について明らかにした。さらに臨床病理学的因子との比較により、TNBCにおけるS1Pの臨床的意義を見出し、今後の治療開発へ向けた研究の礎となることが期待された。
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Int J Mol Sci
巻: 21 ページ: 5744
10.3390/ijms21165744