研究課題
平成30年度は、変異型p53を導入した肺癌細胞株に上皮間葉転換(EMT)が起こることや、スタチンによるこれらのphenotypeの変化を抑制可能であることが実験的に確かめることが出来た。また臨床的にも変異型p53の有無により、スタチンの効果に違いがあることを確認し、これらの内容を論文として発表することができた。まず肺癌細胞株に野生型及び変異型p53を発現するlentivirusを導入し、FACSによるsortingを行って、安定発現細胞株を作成した。これらの継代により、オリジナルは上皮型マーカーを発現していた細胞株から間葉型への変化が起こることが確認できた。また細胞形態も紡錘形へとなり、phenotypeの変化としても浸潤能の亢進や薬剤耐性化がみられた。これらのマーカーやphenotypeの変化はスタチン投与により抑制され、間葉型から上皮型への回復、浸潤能や耐性化の抑制がみられた。さらに臨床検体を用いた研究では、我々がこれまでに作成した肺腺癌完全切除例239例を用いたTissueMicroarrayを使用して、p53遺伝子変異の有無による層別化を行い、EMTマーカー発現や、そしてスタチン内服の有無による術後生存に対する影響を確認した。p53遺伝子変異グループにおいては、スタチン内服群は予後良好であったが、野生型p53グループでのスタチン内服には、それらの効果がみられなかった。これらの結果を論文化し、報告した。
2: おおむね順調に進展している
肺腺癌において変異型p53がEMT活性化を誘導することを実験的に確かめることが出来た。またその治療法としてスタチン投与がEMT活性化を回復することを示し、臨床的にも、有意な差があることを確認した。これらのメカニズム解明により、今後の治療法開発の可能性を示した。
なぜ野生型p53肺癌においてスタチン投与が浸潤能の亢進や薬剤耐性化を来し、患者予後を悪化させるのかを検証する必要がある。
同じ研究室内で研究試薬、機器の共有利用が可能だったため消耗品費の使用を押さえる事が出来、次年度に予算を回すことが出来た。
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Cancer Management and Research
巻: 11 ページ: 3419-3432
10.2147/CMAR.S200819