研究課題/領域番号 |
18K19579
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮川 周士 大阪大学, 微生物病研究所, 招へい研究員 (90273648)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | PERV / CRISPR/Cas3 / ブタ線維芽細胞 / Dol-P-Man |
研究実績の概要 |
ブタを足場としてヒトの臓器を作らせる再生医療、およびバイオ人工臓器の開発が進んでいる。しかし、今だブタ内在性レトロウイルス(PERV)の問題が取りざたされている。研究の目的はPERV感染の可能性の少ないブタを作る事である。一方世界的には、CRISPR/Cas9法により、米国のVentureが既にPERV-KOブタを開発し、ドイツではPERV-CのKOブタを開発している。しかし、これらにはCas9法の特許の問題が絡んでいる。 我々は、このCas9法を避けて、CRISPR/Cas3法によるブタ作りを試みている。Cas3法で先ずは検定しやすいGalTのKOを試みた。Exon9をtargetに5’、3’側にsite(#45と#86)を設定し、そのKO効率を検定した。(6x105個の)ブタ線維芽細胞に、pX-Cascade,BPNLS-hCas3,pBS-U6-crRNAをそれぞれ0.5ul導入する方法をとり、結果的に9つ(#45:2,#86:2, #45+#86:5)のコロニーを作出し、Sequenceで294-754bpのdelを確認している。 またさらに、Hanganutziu-Deicher抗原の遺伝子CMAHに対しても、同じく、Exonの2箇所にsiteを設定し、pBS-U6-crRNAを作出した(#52と#64)。 一方、ブタのDol-P-Manに関しては、Cas3法でKOすべく、NIH databaseより各Exonの位置を割り出し、siteを設定して、現在pBS-U6-crRNAを作成している。これには、PERVを自然に放出している細胞のline(PK15: 腎由来株)での検定を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRISPR/Cas3法のブタ細胞での困難性。恐らく、遺伝子導入した結果として、小さなdelしか出来ないCas9法に比して、Cas3法では、今回294-754bpのdelを確認した様に、多くの場合約300bp以上のdelが発生し、細胞の核に対してかなりのダメージを与え、それに伴いアポトーシスを誘導し、結果的にKO細胞のcloningの効率が落ちていることが考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
CRISPR/Cas3法の継続、つまりこの方法でPK15細胞のDol-P-Manをtargetし、ヒト細胞(293T)と協培養し、PERV感染率の変化を検定する方法をとる。 また、新しいKO法、例えばCas12a(Cpf1)の場合はcrRNA が41-44bpでありオフターゲット効果が少ない事になるが、PAM siteがTTTVと特殊で、切断効率はCas9より落ちるとされている。この様な方法も取り入れて、PERV感染の縮小化を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子導入した結果として、小さなdelしか出来ないCRISPR/Cas9法に比して、CRISPR/Cas3法では、今回確認した様に約300bp以上のdelが発生し、細胞にかなりのダメージを与えアポトーシスを誘導することが考えられた。このため、研究が遅れている状態である。 しかし、CRISPR/Cas9法には特許の問題が絡んでいるため、今後もCRISPR/Cas9法、その他の方法で研究を進めていく予定である。
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