研究課題
肺癌などの悪性新生物の診断・治療および治療後経過観察においてCT検査は欠かせないが、その放射線被曝による人体への有害事象(2次癌の発生など)が危惧される。しかしCT検査による生体への放射線影響に関する科学的知見は皆無である。簡便な染色体異常検出法としてPNA-FISH法が近年開発され、従来のギムザ染色法とは比較にならないほど診断が容易となった。このPNA-FISH法は低線量(15-80mGyレベル)照射においても血液細胞の染色体異常の有無評価が可能である。本研究ではPNA-FISH法を用いてエビデンス提示には欠かせないが従来法では困難であった多数検体の解析法として、ハイスループット染色体全自動解析システムの構築を目指した。さらに、肺癌患者において抗癌剤使用の有無を考慮してCT検査の前後に採血を行い、新システムを用いて放射線被曝の影響を染色体異常などのゲノムレベルおよび遺伝子発現レベルで解析し、スコア化して被曝におけるCT検査の安全性や至適使用頻度・抗癌剤併用リスクの提唱を目標とした。1)自動解析用染色体標本の最適化画像認識ソフトウェアでは重なり合った染色体を2つの別の染色体として認識することが困難であったため、まず最適な染色体標本の作製条件を調べた。さらに蛍光色素だけでなく、PNAプローブを認識する赤色および緑色の化学色素を用いて光学顕微鏡においても観察可能なPNA-FISH法の確立に成功した。2)染色体画像解析ソフトウェアの改良ギムザ染色による染色体標本用の二動原体染色体・環状染色体用の自動解析ソフトウェアを基盤とし、PNAプローブにより赤色と緑色の色素で可視化されたセントロメア、テロメアからなる染色体の自動解析ソフトウェアの開発に現在も取り組んでいる。
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Radiology
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10.1148/radiol.2020190389