研究課題
本研究は、大動脈瘤・解離に代表される組織破壊性血管病変の炎症病態進行機構を解明し、新発想の修復治癒促進療法の開発に挑戦することを目的とする。研究者は、血管病変に特有の過度な力学刺激が、炎症促進型から組織治癒型へのマクロファージの形質転換をJNKシグナル系依存性に阻害し、炎症病態を遷延化するという仮説を構想した。本研究では、ヒト組織、培養系とマウス実験系を用いてこの仮説を実証し、力学刺激と免疫系細胞マクロファージの連関機序を標的とした革新的抗炎症療法の開発に繋げる。そのため、平成30年度に以下の計画Ⅰと計画Ⅱを実施した。【計画Ⅰ.ヒト病変組織におけるマクロファージとJNKシグナル系の解析】瘤・解離のヒト病変組織をウエスタンブロットや免疫組織染色によって解析し、対照組織に比べて、JNK2活性化とマクロファージの集積を確認した。【計画Ⅱ.力学刺激によるJNK系依存性マクロファージ変容と炎症病変進行の実証】マウス腹腔由来の培養マクロファージ細胞を過度に進展する実験系を確立した。培養マクロファージは過度な周期的進展刺激によって、NOS2等の炎症分子を亢進させ炎症促進型を呈した。さらに、この炎症促進型マクロファージへの変容はJNKシグネル系に依存していた。アンジオテンシン持続投与で誘発される瘤・解離モデルマウス実験系を確立した。このモデルにおいて、血圧上昇による力学刺激への暴露により、病変部にJNK活性化を伴ったマクロファージの集積することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度に予定した計画Ⅰと計画Ⅱを実施することができ、概ね予想通りの結果が得られた。
今後は2019年度に予定している【計画Ⅲ.JNK系介入によるマクロファージ制御と病変修復治癒促進の実証】を実施する。現在のところ、計画を変更を要するような問題点は見当たらない。
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Nat Rev Dis Primers
巻: 4 ページ: 1-22
10.1038/s41572-018-0030-7