研究課題
近年、免疫チェックポイント阻害療法の有効性にネオアンチゲンに対する免疫応答の貢献が示唆されネオアンチゲンの重要性が注目される。しかし担癌患者では 腫瘍微小環境における免疫抑制ネットワーク形成が有効ながん免疫応答を阻んでいる。本研究では大腸癌、胃癌を中心とした消化器腫瘍の遺伝子変異について次 世代シーケンサーを用い網羅的解析し、各腫瘍個別の遺伝子変異由来の抗原エピトープ(ネオアンチゲン)を予測、同定する。同時に遺伝子の網羅的発現解析に より各腫瘍における免疫抑制ネットワークを同定する。これにより患者個別のネオアンチゲン標的免疫療法と患者個別の免疫抑制ネットワーク解除療法の併用療 法より成る、がんの特性と免疫環境の特性に応じた極めて個別化デザインされたがん免疫療法の開発を目指す。2019年度には、以下の研究実績が達成された。1. 2018年度の腫瘍局所のマクロファージを標的とした抗原デリバリーシステムを用いてワクチンを行うとT細胞輸注療法の効果が劇的に向上するという発見に基づき、2019年度には本デリバリーシステムとネオアンチゲンを用いたワクチン療法の併用療法の効果をマウスのin vivo腫瘍治療評価系において確認した。その結果、この併用療法には相乗効果があることが明らかとなり、有効な新規がん免疫療法の臨床開発に繋がることが期待された。2. T細胞応答の抗原認識後の細胞内シグナルを調整する新規化合物Xを、ネオアンチゲンを標的としたT細胞輸注療法における効果をマウスのin vivo腫瘍治療評価系において確認した。その結果、この新規化合物Xはネオアンチゲンを標的としたT細胞輸注療法の効果を高めるがことが明らかとなり、有効な新規がん免疫療法の臨床開発に繋がることが期待された。
1: 当初の計画以上に進展している
マウスの腫瘍細胞株についてExome sequencingを用いてnonsynonymous mutationを検出することに成功している。 また、ネオアンチゲンを標的としたワクチン療法及びT細胞輸注療法の効果をそれぞれ増強する方法を見出すことに成功している。
2019年度に見出したネオアンチゲンを標的としたワクチン療法及びT細胞輸注療法の効果をそれぞれ増強する方法について、腫瘍微小環境における免疫抑制機構解除との関係を解析する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 図書 (6件) 備考 (1件)
Cancer Immunology, Immunotherapy
巻: 69 ページ: 663-675
10.1007/s00262-020-02483-1
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/m-oncology/