研究課題/領域番号 |
18K19590
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
佐和 貞治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10206013)
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研究分担者 |
木下 真央 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20816384)
藤木 純平 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (30805114)
清水 優 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40800131)
岩野 英知 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (60382488)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 緑膿菌 / 敗血症 / バクテリオファージ / 薬剤耐性菌 / 重症肺炎 |
研究実績の概要 |
重症細菌性肺炎に対するバクテリオファージ療法について、重症緑膿菌性肺炎動物モデルを用いてその実用性を検討する。社会背景として、地球規模での抗菌剤の汎用により多剤耐性菌が世界中で蔓延し、超多剤耐性や全抗菌剤耐性菌などのスーパーバクテリアの出現も懸念され、人類の将来にとって多剤耐性菌による細菌感染症が大きな懸念となっている。本研究では、マウス重症緑膿菌性肺炎モデル等を用いて、バクテリオファージ療法の治療療効果や副作用について調べ、抗菌剤に代わる新たな重症細菌性肺炎の治療法としての実用化に向けた基礎的データを集積する。バクテリオファージ療法の効果や副作用などをin vivoで評価するために、研究代表者ら(佐和貞治、清水優、木下真央)が医学領域で緑膿菌ワクチン及び抗体療法の開発に用いてきた重症緑膿菌性肺炎マウスモデルと、研究分担者らが獣医学領域で研究を進めてきた効率的なファージの選択技術を組み合わせた実験系を整備し、①特定の緑膿菌株に有効なバクテリオファージを効率的に選定システム構築、②細菌・肺上皮細胞in vitro共培養系による選定、③マウス重症緑膿菌性肺炎モデルでのin vivo効果評価、④バクテリオファージに対するin vivo免疫応答評価、の4段階の実験を計画している中で、前半部分のプロジェクトを実施し、後半のプロジェクトにつなげていく。重症細菌性肺炎の治療に関わる中で、抗菌剤だけに頼らない重症感染症を制御する治療法の開発が必要である。ファージ療法は、20世紀前半より旧東欧地域にて限定的に開発研究が進んできた。しかしファージ療法が細菌の薬剤耐性に対処する新たな代替治療法の一つとして再考がはじまっている。人類の将来が懸念される多剤耐性菌に対する新戦略として可能性を持つファージ療法について、本邦のこれまでの獣医領域および医薬領域の英知を結集して研究を推進したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗緑膿菌バクテリオファージの選択:特定の緑膿菌種に有効な殺菌性を示すファージを選択して、感染症に対するファージ療法に応用するために、バリエーションの豊富なファージライブラリのストックと、効率良い選択システム開発が必要であるが、研究分担者により、汚水から多種のファージストックを作成し、特有の細菌種に対して殺菌作用を持つファージの選択を短時間で行うシステムを構築した。この技術をヒト臨床に応用すべく、臨床分離された緑膿菌に対して、殺菌作用を発揮するファージの高速スクリーニンク選定を行い、抗緑膿菌作用を持つファージを選択した。
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今後の研究の推進方策 |
細菌による肺傷害がファージにより抑制できるかどうかは、ファージの殺菌作用のみならず、殺菌に関わる時間的因子や、ファージの細菌への付着など複雑な要因が影響するため、緑膿菌・培養肺上皮細胞のin vitro共培養系でファージ療法の細胞保護作用を評価することで、より効果的にin vivoので治療効果を発揮を期待できるファージ選定を行えるようにする。 マウスを短時間全身麻酔し、鈍針を用いて経気道的に致死量緑膿菌を肺内に投与し、覚醒させて観察する。感染1~4時間以内に、治療用ファージを経気管的に肺内に投与する(図4)。ファージ療法の効果について、感染後48時間の体温、活動度、肺浮腫の定量、肺内細菌量、ミエロペルオキシダーゼ測定、炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1β、IL-6)を測定し、ファージを投与しない無治療群や既存のIVIG療法との比較において判定をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね順調に進んでいるが、ファージの精製が順調に進んだために、当該年度の予算より少ない経費で実施可能であった。来年度以後に経費を振り分けることで、より有効なデータの集積に努めたい。
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