研究課題/領域番号 |
18K19592
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
八木 洋 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20327547)
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研究分担者 |
須藤 亮 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20407141)
水口 裕之 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (50311387)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞外マトリックス / 胆管再生 / 胆管上皮細胞 |
研究実績の概要 |
【背景・目的】細胞外マトリクスとしての足場機能を保持し生体臓器由来の3次元骨格を抽出する技術として、我々の研究グループではこれまで「脱細胞化」に着目し、特に肝臓由来の立体骨格に対して各種細胞を注入・循環培養して再細胞化する技術を確立し、骨格内における細胞動態・機能発現を検証してきた。移植後の脱細胞化骨格内部で一部胆汁の産生が確認されたが、胆汁の排泄経路を確保するには至っていない。胆管構造を再生するために、今回ラットの脱細胞化肝臓を用い、分離した新鮮胆管上皮細胞を胆管の骨格構造に注入して他の細胞と共に循環培養を行い、細胞動態を観察した。【方法】ラット肝臓の門脈・胆管アクセスを確保した上で脱細胞化処理を行い、別のラットから分離した新鮮胆管上皮細胞を、脱細胞化肝臓に残る胆管構造内に注入し、3日間循環培養を行った。胆管上皮細胞による再細胞化の状態を免疫組織学的解析と、Phalloidinで細胞骨格, Hoechstで細胞核を蛍光染色した細胞を用いた共焦点顕微鏡による三次元画像解析によって評価した。また、ブタ肝臓由来の脱細胞化骨格においても胆管構造へのヒト胆管癌細胞を用いた注入試験を行い、生着を観察した。【結果】分離した新鮮胆管上皮細胞を胆管骨格内に注入した結果、胆管骨格構造の破綻や細胞の漏出は観察されなかった。また注入速度・圧など胆管上皮細胞注入後の循環培養方法を最適化した結果、胆管骨格壁に沿ってCK19陽性のviableな胆管上皮細胞が確認された。また、蛍光標識した細胞を用いた立体構造解析の結果、胆管の枝状構造が三次元的に可視化された。また、ブタ肝臓骨格でも同様に胆管上皮細胞の生着が観察された。【結語】脱細胞化後に残存する胆管骨格を用いて胆管上皮細胞を効率的に生着させる技術を確立した。本法によってこれまで困難であった再生肝臓の胆汁排泄路を確立しうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究成果として、注入速度・圧など胆管上皮細胞注入後の循環培養方法を最適化した結果、胆管骨格壁に沿ってCK19陽性のviableな胆管上皮細胞が確認された。また、蛍光標識した細胞を用いた立体構造解析の結果、胆管の枝状構造が三次元的に可視化された。また、ブタ肝臓骨格でも同様に胆管上皮細胞の生着が観察された。以上のことから、脱細胞化骨格を用いた胆管再生の条件検討が終了し、今後の移植実験に向けた準備が整ったと言える。また立体的な胆管構造の再生については、世界的にも例が非常に少なく、学術的な意義も大きい。当初計画通りに順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の実験によって、脱細胞化後に残存する胆管骨格を用いて胆管上皮細胞を効率的に生着させる技術を確立した。本法によってこれまで困難であった再生肝臓の胆汁排泄路を確立しうる可能性が示唆された。2020年度では前駆細胞との比較検討を行って、細胞ソースとして成熟細胞化、未熟細胞どちらが優れているかを明らかにし、その結果を論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染による学会の延期、中止によって、2020年2月および3月に発表を予定していた複数の学会発表が中止となり、その結果、発表に伴う旅費・交通費・参加費が大幅に減額となったため。 また研究助手の活動制限があったため、一部人件費が減額となった。 実験そのものについては予定通り使用している。 次年度については、コロナの影響が解除された段階で、発表を多く行い、また研究開発をさらに加速する。その結果、論文執筆を前倒しにできる可能性が高く、論文校正・投稿料に反映したいと考えている。
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