研究課題
ドナーHLAに対する抗体(DSA)が引き起こす慢性拒絶反応は長期成績を妨げる重大な因子となっている。ドナーHLAの免疫応答に関わるT細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)を特定し、de novo DSA産生の早期診断と有効な予防・治療法の開発の可能性を探る研究である。(1)腎移植後de novo DSA産生を認めた患者の末梢血単核球よりmRNAを抽出し、経時的にTCRレパトア解析を行った。de novo DSA産生時から持続して高頻度(出現率1%以上)を示したTCRβレパトアを特定することができた。さらに、CD4, CD8分離後の解析で、それぞれ特有のレパトアを同定した。 同じHLA特異性を持つDSAであっても、抗体産生に関わるTCR(抗原提示細胞との反応)は、レシピエントHLAクラス2により異なっていた。今後、これらのTCRレパトアが実際に特定のHLA抗体産生に関与するかどうか、早期診断としての有用性、さらにIn vitro assayにより、移植前に抗体産生に関わるTCRレパトアを推測することが可能か、次なる検討課題を明確にした。(2)CD4 T細胞のIndirect Recognition Pathway認識系に着目し、未熟樹状細胞でペプチドパルスまたはドナー細胞貪食を行い、サイトカインによる活性化、成熟化後に、CD4T細胞の反応性を解析するELISPOTアッセイの確立に成功した。(3)In vivoモデルとして、重症免疫不全(NSG) マウスを用いたヒト化マウスの系の確立を試み、末梢血でのヒトT細胞、ヒトIgG、IgM抗体の検出、その後のGVHDを確認した。(4)腎移植700例を用いた解析により、B cell receptorが認識するエピトープ(EPLET)ミスマッチと同様に、TCRが認識するエピトープ(レシピエント樹状細胞に提示可能なドナー由来ペプチド数)も独立したDSA産生因子であることを明らかにした。以上より、移植領域におけるTCRをターゲットとした抗体関連型拒絶反応の早期診断の理論的根拠を明確にし、新規治療法開発の可能性を示すことができた。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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