肺腺がんの原発・脳転移腫瘍14ペア試料(非がん組織、原発腫瘍、脳転移腫瘍DNA:1ペアについては、同時多発がんと判明したため除外)の全エクソームシークエンス解析を行い、原発・脳転移腫瘍間の共有変異とそれぞれの腫瘍特異的な変異の数を算出した。変異数に関しては、14ペアの症例ごとにさまざまであった。当初、標準的な条件でMutect2プログラムを用いたゲノム変異データを取得し、解析に供していたが、ドライバーがん遺伝子遺伝子の検出率が、臨床検査データと比べ低いことに気づき、研究者独自の次世代シークエンスデータからなるpool of normals (PON)を用いることで、より高精度な変異コールを達成した。原発・脳転移腫瘍の診断時期、原発・脳転移腫瘍の診断時期などの診療情報を用い、ドライバー変異の発生時期、真の転移時期の推定モデルの構築を行った。推定モデルに関しては、モデル構成因子を変更しながら複数のモデルを構築した。また、個々の腫瘍の腫瘍増殖率が腫瘍内Ki67染色細胞割合をもとに数値化できるかを検討するため、一般的な臨床がんよりも、よりゆっくりと増殖する「CT検査において検出されたすりガラス用陰影」から増大したがん摘出標本と一般的な肺がんとの染色率の比較を行うことで、Ki67染色細胞割合の構成因子としてのauthenticityを担保した。最終的な数理モデルプロトタイプを用いて、各解析症例におけるドライバー変異の発生と転移時期の推定を行った。その結果、両タイミングともに症例間で大きく異なることが示唆された。また、本モデルの検証用として、約100例の早期肺がんの全エクソームシークエンス解析を行い、変異データの取得を行っている。変異データ確定後に、本モデルの検証用データとして用い、プロトタイプのblush upを行う予定である。
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