研究課題/領域番号 |
18K19603
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
淺原 弘嗣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70294460)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 筋分化 / DNAメチル化 / DNMT3A / Rp58 / ES細胞 |
研究実績の概要 |
筋分化の研究領域は、転写因子MyoDという世界初のマスター因子の発見以来、発生・再生研究をリードしてきた。さらに、筋分化をモデルに、細胞運命決定のメカニズムを明らかにするため、我々はホールマウントインサイチューハイブリダイゼーションをほぼすべての転写因子・転写コファクターに行い胎児発生期の遺伝子発現データベースを作成した。その結果として、抑制性転写因子Rp58が、筋分化の遺伝子ネットワークの要となることを世界に先駆けて発表した。さらに、我々は、DNMT3AとDNMT3Bの筋および筋サテライト細胞特異的ノックアウトマウスを作成することで、de novo DNAメチル化が筋の発生と再生に必須であることを報告している。また、ヒト筋芽細胞の分化系においてゲノムワイドなメチル化の解析を行ったところ、DNAメチル化の亢進がRp58の認識部位に、特異的かつダイナミックにおこっていることを発見した。 de novo DNAメチル化は、多くが初期発生期におこり、組織特異的なde novo DNAメチル化領域は比較的限局されていると考えられている。我々は筋特異的なDNMT3Aのノックアウトマウスの筋組織のde novo DNAメチル化部位をゲノムワイドに探索した。さらに、Rp58が筋分化において、de novo DNAメチル化を介して必須の機能を果たす仮説を検証するため、Rp58のコンディショナルノックアウトマウスを作成し、筋細胞特異的なCreマウスと交配させたところ、この遺伝子改変マウスでは、筋組織の分化が著しく阻害されていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rp58の欠損によるHoxの異常発現を介した筋分化阻害の検討: 筋分化において、DNMT3AおよびRp58の筋特異的ノックアウトマウスにおいて、組織染色、遺伝子発現解析などの筋のフェノタイプ解析を行った。 Rp58によるde novo DNAメチル化機構の解明: de novo DNAメチル化は、多くが初期発生期におこり、組織特異的なde novo DNAメチル化領域は比較的限局されていると考えられている。我々は筋特異的なDNMT3Aのノックアウトマウスの筋組織におけるde novo DNAメチル化部位をゲノムワイドに探索したところ、筋分化にともなうde novo DNAメチル化領域を同定し、この領域内にRp58結合サイトが存在することを見出した。さらに、Rp58が筋分化において、de novo DNAメチル化を介して必須の機能を果たす仮説を検証するため、Rp58のコンディショナルノックアウトマウス(Rp58CKO;Rp58fl/fl)を作成し、筋細胞特異的なCreマウスと交配させたところ、この遺伝子改変マウス(Myogeni-Cre;Rp58fl/fl)では、筋組織の分化が著しく阻害されていることが確認され、このCKOマウスの異常筋組織においては、上述の領域が低メチル化状態のままであること、これらの近傍の遺伝子の発現が高い状態にあることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
i)Rp58とDNMT3Aの筋分化におけるゲノムワイドな局在解析:DNMT3AおよびRp58の5’にHAタグをCRISPR/Cas9を用いて挿入したノックインマウスを作成し、それぞれのE12.5, E13.5, E14.5の筋組織を用いてChIP-Seqを行い、DNMT3AとRp58の結合サイトのde novo DNAメチル化領域にオーバーラップがあるかどうか解析する。 ii)マウスES細胞を用いたHox遺伝子座におけるRp58結合領域のDNAメチル化への影響:マウスES細胞からの筋分化の系において、Rp58のリクルートとde novo DNAメチル化のタイミングを時系列で解析、更に、Rp58結合サイトに、dCas9をリクルートすることでRp58の結合を阻害させた時のDNAメチル化および遺伝子の発現、更に筋分化への影響を検討する。この時、ヒストンの修飾マーカーもChIP-seqによって解析し、ヒストン修飾とDNAメチル化の関係についても検証する。 iii)マウス個体レベルでのDNAメチル化誘導領域の解析:上記データを基に、Rp58結合領域をCRISPR/Cas9を用いて削除したマウスを作成、そのホモノックアウトマウスのフェノタイプおよび当該領域のDNAメチル化状態を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)遺伝子改変マウスの作成の一部が当初計画よりも遅れ、実験に使用可能なマウスを得ることができなかった。結果として本年度実験可能であったマウス数は予定より少なくなり、また同マウスを用いて行う予定であった実験が行えなかったことにより、予定通りの予算執行ができなかった。 (使用計画)次年度においては計画していた全ての遺伝子改変マウスが作成できる予定のため、これを飼育・繁殖させ、十分な数の同マウスを用いた実験、およびそれを用いた分子生物学的実験に必要な試購入のために使用する。
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