研究課題/領域番号 |
18K19611
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 典生 京都大学, 医学研究科, 講師 (70378644)
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研究分担者 |
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 講師 (50335270)
岡野 高之 京都大学, 医学研究科, 助教 (60642931)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | non-coding RNA / 再生 / 内耳 |
研究実績の概要 |
1.まず、lnc RNAの一つであるMalat1の内耳発生における発現をin situ hybridizationを用いて検定するため、Probeを作成した。作成したProbeを使って、Malat1の発現部位を調べたところ、マウス胎生13.5日では内耳のうち、聴覚を担う蝸牛の上皮全体に発現を認め、その後の時期も胎生15.5日、17.5日と蝸牛上皮全体での発現は続いていた。胎生13.5日から17.5日は蝸牛上皮において機械電気変換を行って音振動を静止膜電位の脱分極による電気信号に変換する役割を果たし、聴力を知覚する細胞である有毛細胞が、その周囲の支持細胞との共通の前駆細胞から分化を遂げ機能を持ち始める時期である。この時期を通じてMalat1は蝸牛神経上皮以外の間質には発現を認めず、Malat1が蝸牛上皮の発生においてなんらかの機能を果たしているものと考えられた。胎生13日目の蝸牛の細胞を用いてMalat1の発現量をRT-PCRで検討した。蝸牛の細胞のうち、有毛細胞、支持細胞の共通の前駆細胞のマーカーであるSox2陽性の細胞と陰性の細胞とを別に調整してMalat1の発現量の比較を行ったところ、Malat1の発現はSox2陽性細胞においてSox2陰性細胞の4倍の発現量であった。このことから、Malat1は、蝸牛の上皮の中でも、その主な機能を担う有毛細胞の発生に重要な役割を果たすと推測される。 2.別のlnc RNAであるGomafu KOマウスの聴力を測定した。聴性脳幹反応を用いて10、20、40 kHzの聴力を測定した。6週齢、12週齢では同腹の野生型のコントロールマウスと比較して聴力の差はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
lnc RNAの一つであるMalat1の内耳蝸牛の連続した発生期における発現を確認することができ、Malat1が内耳蝸牛有毛細胞の発生に関わっていることを示唆できた。一方、もう一つのlnc RNAであるGomafuのKOマウスの聴力は12週齢まででは同腹の野生型マウスと差がなかった。現在のところ予定した実験を進めていくことができている。
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今後の研究の推進方策 |
Malat1に関しては、胎生期13日よりも前における蝸牛による発現を確認する。また、定量的RT-PCRを内耳発生期全体に経時的に行って、内耳発生に伴っておこる発現量の変化を検定する。 Gomafuに関しては、今後は聴力を測定するマウスの数を増やし、オス、メスを分けて聴力の測定を行う。また、加齢によっておこる難聴の程度に差がないかどうか、6ヶ月齢、12ヶ月齢まで観察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用計画
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