研究課題/領域番号 |
18K19615
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久保 盾貴 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00362707)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 筋線維芽細胞 / レックリングハウゼン病 / ケロイド |
研究実績の概要 |
レックリングハウゼン病(neurofibromatosis type 1、以下NF-1と略す)では、手術後の傷跡が非常にきれいになることが知られていることから、NF-1由来の筋線維芽細胞の機能を重点的に解析し、新たな観点から瘢痕形成機構を解明することによりケロイドに対する新治療法の開発を目指して研究を行った。 まずは、NF-1の機械的伸展刺激受容機構に関する解析を行った。これまでの研究により、機械的伸展刺激に対してNF-1由来の皮膚線維芽細胞では、正常の皮膚線維芽細胞で見られる筋線維芽細胞への分化亢進が認められなかったが、同様の結果が、NF-1の原因遺伝子産物であるNeurofibrominのsiRNAを用いた実験においても確認された。 機械的シグナル伝達経路の代表的な1つに、Rho/ROCK/LIMK/Cofilin/Actin経路がある。過去の文献によると、NeurofibrominはRhoAの下流にあたるLIMKのリン酸化(活性化)に対して抑制的に作用することが報告されている。すなわち、Neurofibrominの機能的異常を来しているNF-1においては、LIMKおよびその下流のCofilinが過剰にリン酸化状態にあると予想した。そこで、機械的伸展刺激前後におけるそれらのリン酸化タンパク質発現の変化をウエスタンブロッティングにて解析したところ、正常線維芽細胞では伸展刺激によりLIMK2およびCofilinのリン酸化が亢進するのに対し、NF-1由来線維芽細胞では伸展刺激前からリン酸化タンパク質が多く、伸展刺激を加えてもその増加は見られなかった。 以上の結果から、NF-1における機械的刺激に対する筋線維芽細胞への分化能低下は、Neurofibrominの機能的異常によるLIMKおよびCofilinの過剰なリン酸化による可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
もう1つのアプローチとして、NF-1由来筋線維芽細胞では正常由来筋線維芽細胞と機能発現に相違があると想定した解析も行っているが、コラーゲンなどの細胞外マトリックス産生能やTGF-βなどのサイトカイン産生能に関する結果が安定せず、アッセイの再現性を獲得するために様々な工夫を繰り返し試す必要があり、そこに時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、NF-1の機械的伸展刺激受容機構に関する解析をさらに深めていくとともに、NF-1由来筋線維芽細胞の機能発現についても様々なアプローチから研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の財源があり、特に物品購入に関しては、優先的にそちらを使用していたので、次年度使用額が生じた。次年度に関しては、大学院生のみでなく、テクニシャンも使って、さらに強化的に実験を行う予定である。また、皮膚線維芽細胞への遺伝子導入効率が悪く、ウイルスベクターを使用する予定であるが、効率化をはかるため、外部委託する予定であり、そちらの物品費として、次年度学を使用する予定である。
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