研究課題
嗅覚障害の1つに嗅覚過敏がある。嗅覚過敏は多くの場合、その対象となるにおいに対して強い嫌悪感をいだいている。この嗅覚過敏の発症のメカニズムの1つとして、パブロフの条件づけが考えられる。自分にとって有害、不利益、危険、つらい状況に遭遇すると、その時の周囲のにおいとそのネガティブな経験が関連づけられて記憶される。そして、その様な状況からいち早く回避するため、そのにおいに対する感受性が高くなり嗅覚過敏になると同時に、そのにおいに対して強い嫌悪感をいだくようになる。さらに、この条件づけが社会的ストレスの場合に、学校や職場の建物のにおいがトリガーとなる心的外傷後ストレス障害(PTSD)や、引きこもりなどの原因にも発展する。本研究ではこれらの嗅覚過敏のメカニズムを研究するため、まず確実な嗅覚過敏モデルの作成方法の確立とその治療薬の開発を試みた。我々は味が生じないような微量のにおい物質(vanilla essenceやalmond essence)を飲水用のボトルに入れ、マウスに与えた。このことによってマウスは口腔内で揮発する微量のにおい分子のにおいを感知することができる。この方法で微量のにおい物質を含んだ水をマウスに飲ませた後にマウスの腹腔にLiClの溶液を注射すると、マウスは腹痛を起こす。この条件づけを行った後に、におい物質の入った水の飲水量をtwo-bottle choiceにより測定し、マウスのにおい嫌悪学習モデルを確立した。このにおい条件付けモデルでこれまでに報告されているPTSDモデルラットの消去学習を促進する薬剤などを試してみたが、においによる嫌悪学習に対して、条件づけの反応を軽減するような効果は認められなかった。今後、このモデルを用いて扁桃体や海馬における遺伝子発現変化の解析を行うと共ににおいの嫌悪学習を過剰な反応を軽減する薬剤を検索する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
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