研究課題
悪性グリオーマが極めて治療困難な要因は、腫瘍幹細胞 (BTSC) が正常脳組織へ浸潤する性質を有することである。一方、神経幹細胞(NSC)は、脳内を遊走し脳腫瘍へ集積する性質を有することから、治療遺伝子を搭載する細胞としての役割が注目されている。そこで本研究では、治療困難な浸潤性BTSCの根絶を目指してiPSから分化誘導したNSCを用いた自殺遺伝子細胞治療の開発を行う。導入する自殺遺伝子は、シトシンデアミナーゼ(CD)とUPRT遺伝子の組み合わせを用いる。CDは5-fluorocytosine(5-FC)を 5-fluorouracil(5-FU)に変換し、DNAおよびRNA合成を抑制して細胞死へ誘導する。さらにUPRTは5-FU を thymidylate synthase 阻害剤 である5-FUMP へ変換するため、CD 単独と比べ 100倍以上の bystander effect (周辺腫瘍細胞を細胞死へ誘導する)が得られる。本年度は、自殺遺伝子を組み込んだiPS細胞の作成を行った。iPS細胞は、安全性が確認されたintegration-freeのヒトiPS細胞株を用いて、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、GAPDH領域にCD-UPRT自殺遺伝子を挿入した。具体的には、GAPDHとhKO1(赤色蛍光タンパク質)とを2A peptide配列で連結し、CD-UPRT発現ユニットが逆方向に挿入される相同組み換え用コンストラクトを作製した。相同組み換えiPS細胞をhKO1発現により選択し、genomic sequencingにより確認した。以上、本年度はCD-UPRTを安定発現するiPS細胞株を樹立した。
2: おおむね順調に進展している
ゲノム編集技術(CRISPR/Cas9システム)を利用して、iPS細胞のGAPDH領域にCD-UPRT遺伝子挿入した。CD-UPRTを安定発現するiPS細胞の作成に成功し、NSCへの分化誘導を確認した。本年度の目標はおおむね達成することができた。
1. CD-UPRT-iPS由来NSCを用いたin vitroでのBTSC殺傷効果の解析CD-UPRT発現細胞は、5-FCを投与すると、CDが5-FCを5-FUに変換し、UPRT が5-FU をthymidylate synthase 阻害剤の 5-FUMP へ変換するため、周辺の腫瘍細胞を細胞死へ誘導する。ゲノム編集操作により得られたCD-UPRT-iPSをNSCへ分化誘導後、in vitroでのヒトBTSCに対するbystander effectを検証する。2. 脳スライス培養におけるCD-UPRT-iPS由来NSCのBTSC殺傷効果の解析ヒトBTSCモデルマウスにCD-UPRT-NSCを移植後、脳切片を作成し、共焦点レーザー顕微鏡のCO2チャンバー内で5-FC投与下培養し、BTSC殺傷効果、NSC移動能をtime-lapse撮影により解析する。我々はすでにslice培養上でiPS由来NSCを5日間観察することに成功している。
(理由)効果的に物品調達を行った結果であり、次年度の研究費と合わせて試薬・消耗品などの購入に充てる予定である。(使用計画)次年度は、自殺遺伝子細胞療法のin vitro効果解析に重点を置くため、幹細胞培養、スライス培養のイメージング解析が主体となる。培養関連試薬、イメージング解析の関連試薬、組織解析の関連試薬を中心に購入予定である。
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