研究課題/領域番号 |
18K19624
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
河村 和弘 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (10344756)
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研究分担者 |
佐藤 可野 国際医療福祉大学, 医学部, 助教 (00511073)
岡本 直樹 国際医療福祉大学, 医学部, 研究員 (80714360)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ライブセルイメージング / 卵巣組織移植術 / 早発閉経 |
研究実績の概要 |
卵巣組織移植は、卵子の源である卵胞を患者に移植する不妊治療法として、近年応募者が開発した早発閉経患者の卵胞活性化療法(後述)やがん患者の妊孕性温存療法における最重要技術である。しかし、患者の残存初期卵胞は卵巣組織内に均一分布せず、一部に集簇して存在している。現行の方法では、移植卵巣組織における卵胞の局在を知る術はなく、卵胞の有無が不明の組織を移植するしかなく、臨床成績に大きく影響する。もし細胞に障害を与えず初期卵胞の局在を可視化できれば、卵胞を含む組織を選択的に移植することが可能となり、卵巣移植術の技術革新がもたらされる。 本研究では細胞毒性が非常に少ない4種類の方法を用いて、生きたヒト初期卵胞を可視化する世界初の試みを行い、全く新しい卵巣移植術を確立して臨床成績の改善を目指す。既存の技術では、組織学的検査により卵巣組織内の卵胞は同定可能であるが、検査後は卵胞の生存性は望めず、その卵巣組織は移植に用いることができない。本研究により生きたヒト初期卵胞の可視化技術が開発されれば、この技術限界が突破される。さらに、ヒト初期卵胞を材料とする機能解析や発育制御に関する新しい研究が可能となり、生殖医療の発展に大きく貢献することが期待される。
本研究では、光学技術を用いる方法、蛍光バイオイメージング法により、卵巣組織中の卵胞の可視化を試み、最良の方法を確立する。本年度は、光学技術の試作機を用いてマウス卵巣を撮影し、その後、組織を固定して5μmの薄切標本をHE染色し、1mmの厚さの三次元像を構築して、組織学的に初期卵胞を描出した。また、蛍光バイオイメージング法のうち、近赤外蛍光標識リガンドの作製を行った、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施予定であった、光学技術を用いる方法であるOCT試作機およびハイパースペクトルカメラSIS-I、NH-7(EBA Japan)を用いてマウス卵巣を撮影し、初期卵胞の撮影に成功した。また、蛍光バイオイメージング法として散乱が低くクリアな像が得られやすい、1000-1500nm波長域(NIR-II)のNIR-II近赤外色素であるCH1055を用いたリガンドの蛍光標識方法を改良し、本年度は広く発育卵胞に分布している受容体のリガンドとして、FSHの標識を行った。
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今後の研究の推進方策 |
OCT試作機およびハイパースペクトルカメラによる卵巣組織撮影では、全ての卵胞を描出できるほどの解像度はなく、さらなる至適化が必要と考えられた。また、次年度には初期卵胞に特異的に発現している受容体のリガンドをCH1055標識し、CH1055標識FSHを陽性コントロールとして卵胞の描出を試みる。また、もう一つの蛍光バイオイメージング法である5-ALによる卵胞標識を進めるため、体外培養下での卵母細胞への5-ALA集積を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
CH1055プローブとその検出系が予想よりも高価となり、今年度はこれまで実績のあるリガンドであるFSHを陽性コントロールとして標識リガンド作成および検出方法の改良を行った。そのため、本試験の主目的の1つである、卵巣初期卵胞に特異的に発現している受容体のCH1055標識リガンドの作製は、標識方法の改良ができ、安価に検出が実施できるようになった段階で行う事としたため、次年度以降に予算を持ち越して初期卵胞を特異的に描出可能なCH1055標識リガンドを作製することとした。
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